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第44話「秘技妄想ナース」
2017年7月2日
午後4時3分



「みんな、近くの人と手を繋いで!」
 千島は結構、真面目な口調だ。
「いや、見えないから手が何処にあるのかがわからないんだけど……」
 要のごもっともなツッコミ。
 何だか嫌な雰囲気が周囲を包むが、それを吹き飛ばす様に、
「探ればいいじゃない! 暗闇に手を伸ばせばいいじゃない!」
 千島はおもいっきり叫んだ。
「わかったわ……じゃあ……これは誰の手?」
「あ!? 琴乃ちゃん! チーだよ!」
 どうやら琴乃が千島の手を掴んだ様だ。
「じゃあ、今度は俺が……この辺りか!」
 潤はベットに腰かけてから適当に右手を伸ばした。



 むに。



「んっ!」
 手にあまる柔らかな感触と要のびっくりした声。
 何を掴んでしまったかはもうわかった。
「わ、悪いっ」
 慌てて手を引っ込める、直後に平手打ちを覚悟して敢えて目をつぶったままでいたが、それは来ない。
 代わりに、引いた潤の右手がグイと引かれる。
「……え!?」
「私も繋いだわよ」
 要は告げた。
 返答に困ってしまったがギュッと何かを促す様に力を込められたので、
「ああ、多分それ俺」
 と、答えておく。



「いいなぁ、私も潤君の手を握りたい!」
 千島が声を上げた直後、
「イテッ、こらっ! チー、やたら手を振るんじゃねぇよ、チョップが炸裂しただろ!」
 抗議の声を上げる小春。 どうやら潤を捜して、空いた方の手をやたら振り回した様だ。
「ゴメン、ゴメン……じゃあ、私は右手は琴乃ちゃん、左手は小春ちゃん」
「ハイハイ、この手がチーだな」
「……じゃあ、これで誰とも手を繋いでない人はいないね? 妄想劇場を開始しちゃおうかな?」
 千島が言うが、
「こういうのはみんなが繋がってないとダメなんじゃないの? 今のままだと私とチーと小春ちゃんは繋がってるけど……潤君と要ちゃんは離れてるわ、そもそも始めから円になるように手を握ったらダメだったのかしら?」
 と、何だかまたごもっともなツッコミを琴乃が入れた。
「…………平気! 結局は繋いだ手よりも通じる心だよ!」
 千島はわずかな沈黙をおいての笑い声。
「じゃあ、手なんか握んなきゃよかったろ……何だかグダグダだな…………イテッ、ヘッドバッドはやめれ! ヘッドバッドは!」
 素直な感想を述べる小春に千島はアクションで答えたみたいだ。
 実は潤も小春の意見に同意なのだが、何も言わないでおく。
 両手は塞がっていても千島には脚が残されているのだ、下手なツッコミから余計な危険を増やす必要はない。



「じゃあ、行くよ……みんな、まずは琴乃ちゃんからね!」
「ええ……」
 緊張した声で千島の呼びかけに答える琴乃。
「琴乃ちゃんに白いナース服……ナースキャップに膝上15cmのスカート……白いストッキングだよ! 琴乃ちゃんの身長162cm、サイズは上から92、62、89の身体をそんなナース服が!」
 千島が語り出す。
「ちょ、ちょっとチー! なんでサイズまで!?」
 驚く琴乃を尻目に千島は続ける。
「エヘヘッ! 見える? みんな、琴乃ちゃんのナース姿」



「見える! 膝上15cmのスカートとストッキングの間に琴乃姉の絶対領域が見えるぜ」
 大仰に答える小春、さっきまでツッコミを入れていた割には、始まってしまえばノリがいい。
 しかし、黒髪ロングヘアーに大きなリボンという本土では死に絶えた良家のお嬢様ルックスで、さらにグラビアアイドル顔負けのプロポーションを持つ琴乃が……そんな白衣に身を包んだ姿を想像すれば潤も何も感じない訳ではない。
「琴乃姉がナース服なんて着たら胸元が……」
 控え目だが、要が指摘すると、普段琴乃に抱きしめられた時に感じる感触と圧倒的なボリューム感を思い出し、
「確かにナース服は身体のラインがある程度出てしまうよな……琴乃先輩が着るとなると……」
 感慨深げに呟く潤。
「この変態、医療に従事するからこその服装じゃないのよ!」
 要は潤と繋いだ手に力を込める。
「アハハハハ……いやぁ……別にいやらしい意味はないんだけど、とか言っても無駄だなアハハハハ」
 わざとらしく乾いた笑いを浮かべる潤に要は、
「……馬鹿!」
 と、呆れた様に言い放った。



「乗って来たね! 今度は要ちゃんの番だよ〜! 157cm……」
「やめなさいよ!」
 千島が琴乃に続き、潤には気になってしまうプロフィールの説明に入ろうとする所でストップをかけた、だが千島は容赦がない。
「だ〜め、要ちゃんのデーター大公開! 157cm……サイズは上から89、58、87!」
「いやぁ!」
 要の叫びと共に潤の頬に衝撃が走る。
 右手を握られたまま、ひっぱたかれたのだ。
「イテッ!」
「いやっ!」
「イテッ!」
「いやっ!」
「いてぇ!」
 手を握られている為に逃げられず、要のビンタ3連発を潤は被弾していた。



「終わった?」
 潤に炸裂した往復ビンタの終了を千島は尋ねてくる。
「なんで俺が……叩くなら千島を……」
「見えないんだから仕方ないでしょ!」
 ぼやく潤に怒鳴る要。
「ハイハイ……妄想再開だよ、脱いだら凄かった系の要ちゃん! 男子の欲求を全て満たしたツンデレナース!」
「やっぱり要ちゃんは油断できない! その身体で患者の潤君を誘惑しちゃうに違いないわ!」
「する訳ないでしょ!」
 再び語り始める千島に勝手な妄想を再開する琴乃、怒鳴る要の潤の手を握る力が強くなる。
 まるでそれは潤に妄想をやめる様に促しているに思えたが、それがかえってナース服の要が恥ずかしがる姿を想像させてしまったのであった。




     第45話に続く


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