第41話「面会者2」
2017年7月2日
午後2時21分
「僕が何かを調べてるって言うんですか?」
潤はベッドから半身を起こしているような無防備な格好だ、聖に身構えてしまう。
「……そんなに構えないでよ、私にまた会いたいって言ったのは君だよ、だから会いに来たのに……」
聖はむくれた。
「確かに昨日、別れる時にまた今度とは言いましたけどね……」
潤が答えると、
「でしょ? 君は私に会いたかったんでしょ?」
瞳を細め、口を尖んがらせる聖。
「でも、それはあなたに聞きたい事があるからなんですよ、別に僕の事なんて関係な……」
「君は何も教えてくれないのに、私だけが君の質問に答えなきゃいけないの?」
「……」
少し強い口調の聖の切り返しに潤は言葉に詰まる。
確かに聖に聞きたい事はあるが、それを聞く為にはこちらもある程度の情報開示をしないと、話が進みそうになさそうだ。
だいたい情報開示とかいう程、たいした情報を持っている訳ではないので、やはり千島の事、そして小春の千里眼に話が及んでしまうだろう。
千島と聖の仲を考えれば、何故、千島があそこまで聖を嫌うのかが知りたい気持ちがあるのだが、あまり2人を結び付けるのは避けたい上、現段階で千島について何かの懐疑心があるとはいっても全て聖に話す気にはなれなかった。
その時の状況もあり、小春には話せた、しかし聖には話せない。
確かに気さくな聖には親近感はある、だが潤は大切なグループの仲間の千島への疑いを彼女に全て打ち明けるつもりにはならなかったのである。
まして、小春の千里眼の事なんて論外だ。
現在、潤に協力を表明している小春が千里眼を自分が実際に使っていた事を認め、千島の使用を調べようとしているなどとは、口が裂けても言える筈もない。
彼女はオカルト関係の雑誌記者だ、千里眼少女の話など聞かせたら、飛びついてくるのは確実だ。
オカルト事件のネタの質としてどうかは分からないが、話に興味を持つなという方が無理であろう。
「僕は何も調べてなんていませんよ」
ここはたとえ千島の事だけでも話すのは避ける事に決める。
彼女が持っているであろう情報収集のノウハウ等が、千島について調べるのに有効かも知れないが、潤はそれをあえて無視した。
すると聖は大きく息を吐くと、パイプ椅子に深く腰掛けなおし、数秒間の間を開け、
「わかった……私が何か勘違いしていたみたいね、何か気にかかる事があったら協力するから教えてよ」
声のトーンを明るくしてウインクした。
もう少し食い下がってくると思ったが、聖はあっさりと引いた。
もしかしたら親身になってくれるかも知れない、と打ち明けようとしてしまいそうになる心と気さくに接してくれる聖に対する後ろめたい気持ちをどうにか封じながら、
「……わかりました」
と、潤は頷く。
しかし、封じたつもりが後ろめたさのような感情がわずかたが表情を曇らせ、顔をうつむかせる。
下がった頭に不意にポンと手を置かれる。
「……聖さん!?」
「……よし、約束だよ……何か困った事があったらお姉さんに報せるんだよ、わかったね」
聖は微笑んでいた。
「さてと、あんまり長居して千島ちゃんに潤君に手を出した! とか怒られるのは嫌だから、そろそろ帰りますか!」
聖は背伸びをしてパイプ椅子から立ち上がる。
時刻は2時47分、千島が来るまではまだ余裕のある時間だ。
「そうですか、心配かけてすいません」
潤が頭を下げると、
「いやぁ、君が無事なだけでもお姉さん安心したからね、良かったわよ……じゃあね!」
聖は笑顔で軽く手を振ってから、病室のドアを開けて廊下に出ていこうとしたが……そこで予想外の事が起こったのである。
聖が開く前にドアが先に開き、そこには聖とあまり歳の離れていない女性が立っていのだ。
その女性には潤も見覚えがある。
黒い髪を編み背中まで垂らした、切れ長の瞳に抜群のプロポーションが目立つ、聖とはまた違った大人の魅力の美人……弓永琴乃の母、近衛であった。
第42話に続く
間が開いて申し訳ありませんでした。
なかなか気軽なシステムでなくなりましたが、感想など貰えたら嬉しいです。
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