第八十四話
大人しく言う事を聞いて目を閉じる陽菜。
(陸くんの……匂いがする……)
それが心を落ち着かせてくれたのか、やがて寝息を立てて眠りについた。
それを見て見目はほっとする。
姫もあたに同じ様な事になる。
いくら慣れたと言ってもやはり心は人間なので堪えられない。
先ほど陽菜に飲ませたのは精神ショック状態に陥ったときの通常の薬の何十倍もの早さで症状をを緩和する薬。
普通、人間には使わない……というより人間の技術ではまだ作れない薬。
姫、和佐、陸、鏡を初めとする我が世界最大の異能者組織の薬剤研究部部長朱里が作り出した物だ。
姫は心地よく眠っている陽菜をまじまじと見る。
(ひーちゃんは……陸ちゃんのこと……)
なんとなく雰囲気的にそうだと思った。
とくに陸の方ははっきりと。
少し胸が痛くなる。
(今――どうして――――……)
思っているうちにいつのまにか陽菜から眠気が移ったのか眠ってしまった。
コンビニでアイスを買った二人は店に帰る途中だった。
和佐がふいに話しかける。
「どうです? 気持ちははっきりしましたか?」
「ぁあ? 何のことだよ」
「もちろん陽菜さんのことです」
陸は少し悲しそうな顔になっていう。
「ああ、少し様子を見て本人から希望を聞いた後に調整することにした。ただ……さっきの様子だったら精神の方はそこまで重くはなさそうだったからなんとかなりそうだ」
「そっちじゃなくて僕が聞いてるのは陸の気持ちの方です!! 恋愛対象とかそっちの意味で!!」
陸はアイスと一緒に買って飲みかけていたお茶を吹く。
しかし、和佐はめげず、必死に真剣なまなざしを向けてくる。
もう誤摩化すことはできなさそうだ。
陸はそっぽを向いてぶっきらぼうに言う。
「…………お前が思うとおりだ」
和佐はおもしろそうにつつく。
「照れると本当にもとの口調に戻るんですね。わかりました、僕が伝えときます♪」
陸は最後の一言を聞き逃さなかった。
「まて!! 伝えなくていい!! っていうか伝えるな!!」
焦って和佐を止める。
「冗談ですよ。それで……いつ告白とかする気です?」
「!? こここここ、告白!? 俺が!? そんなんする訳ないだろ!?」
みるみるうちに涙目になっていき赤くなる陸。
和佐は調子に乗って虐めるように言う。
「だってぇー、付き合いたくないんですか? 付き合ったら僕らみたいに毎日一緒に寝て、おはよう&おやすみのちゅーして、一緒にお風呂に入って、たまにえっちなこともできる仲になれるんですよー? 陸はしたくないんですか?」
陸はうるうるした大きな目で和佐を睨む。
もちろんしたくないわけがない。
「うー……絶対お前俺を虐めて楽しんでるだろ!?」
「ははは、さあどうでしょうー?」
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