第八十二話
「いや……これはその……」
後ろにはおどおどしている陽菜が居た。
陸は仕方なく和佐に罪を着せる。
「か、和佐が中に入りたいとかいうから……っ!!」
「ぼ、僕のせいですか!?」
姫の視線の槍が和佐の方に向く。
そしてどう見ても良くない意味での笑みが口の端から溢れる。
「そう……和佐くんが……じゃぁ家にあるポッキーは没収だね♪」
「ぁああああああああああっ!! 駄目です!!」
「姫一人で食べちゃうからー」
「お前太るぞ」
ぼしょっと言う陸に姫は陸の髪を引っ張りながら不満そうな声をあげる。
「いいもんいいもん、姫太んないもん、っていうか女の子に向かってその台詞なんか失礼ー」
「女の子……ねぇ……」
苦笑いする陸に姫は怒声をあげる。
「むきぃーーっ!! 今『女の子に見えない』とか思ったでしょ!?」
図星、という風に目をそらす。
「さあな……っていうか重いからのしかかるなって!!」
「重いって言わないでよ!! 本当デリカシーの欠片も無い両性生物ね。お仕置きしてしあげるわ」
「怖い!! 和佐ヘルプ!!」
「嫌ですー、さっき僕に罪を着せたくせにぃー」
ぎゃぁあああと言う陸の悲鳴をよそに和佐は陽菜に話しかける。
「姫からそれ借りたんですか?」
陽菜が恥ずかしそうに着ているのは淡いピンク色のバスローブ。
姫のサイズなので少し胸元が緩いのと丈が短かった。
「うん……ちょっと恥ずかしいな……」
顔を赤らめて体をそっと抱きしめる様にして言う陽菜。
そんなガソリンと同じくらいの和佐の性欲の炎を燃え上がらせるパワーが注がれて和佐はどさくさまぎれに腰に手を回す。
「もっと自信もってもいいんですよ? 可愛いんですから」
甘い言葉を耳元で囁かれるので陽菜は真っ赤になる。
その瞬間。
さっきの倍以上はあるもはやチェーンソーレベルの視線がこちらに向けられた。
「和佐くんの浮気者!! 罰として陸ちゃんと一緒にアイス買って来て!!」
「嫉妬ですか? 本当に可愛いですn……ぐはぁっ」
『ね』の発音を言い終わる前に腹に姫の蹴りをくらった。
陸はもう諦めた様子で財布を持って玄関に居る。
「和佐ー早くしないと置いてくぞー」
「待って!! 今行きますから!!」
「チョコバナナ二本ねー、姫とこの子の分」
ガチャンと慌ただしいドアの閉める音が聞こえると同時に空気が沈黙する。
姫はそれをなんとかするために言う。
「えっと……名前なんだっけ?」
確かあのとき自分は名乗った気がするが彼女の名前は聞いていなかった気がする。
「ひな……鈴風陽菜」
「じゃぁひーちゃんだね」
笑顔で姫が言う。
陽菜もそれをみてつられて笑う。
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