第七十七話
「ぎゃぁああああっ!!」
陽菜の首を絞めていた男が目の前で焼かれ、あっという間に灰になる。
ゲホっと咽せながら頭の中が真っ白になる。
今目の前で起きた事に理解不能な陽菜は男のすぐ後ろに立っている空気を一瞬で別の物にした人物へ目を向ける。
「見ぃつけた、私のお人形さん」
その声は陽菜の予想していたものとは正反対の鈴の様な可愛らしい女の子の声だった。
目が霞み始めている中、陽菜は目を凝らす。
煙でよく見えないがありえないシルエットが浮かぶ。
髪の長い女の人だ。
しかも異常に小さい、小さすぎる。
このサイズだと"女の人"ではなく"女の子"だ。
最終的に一人だけ意識のある男が震える声で言う。
「ゆ……許して下さい、女神様……っ」
煙がようやく空気にとけ込んで消えていったとき陽菜は初めてその人物を見た。
この状況でさえ美しいと思えるほどの姿、身長の小ささをカバーするほどの異様な存在感のある女の子が立っていた。
しかし、陽菜はそれ以外の、それ以上の別の感情があった。
(懐かしい……気がする)
ほとんど目が見えない状況なのに思う。
というかその数秒後、陸に見せてもらった図鑑の悪魔のモデルの子だと言う事に気付く。
「そうね。少し相手をしてくれるなら許してあげる。ちょっと待ってなさい」
そして女の子はこちらに向かっているのか足音が近づいて来た。
たぶん返り血で酷いことになっているだろう自分に寄り添う。
「あなたが陸の探し人?」
うまく喋れないので陽菜はこくんと頷く。
視界は真っ暗だったが陸の名前が出た時、光が差したような気がした。
女の子は陽菜の額に手をかざす。
陽菜は限界まで来ていた疲れが一気に安らぐような感覚がした。
(あったかい……)
ここで陽菜の記憶は途切れた。
女の子・姫が必死になって覚えた催眠術をかけたからだった。
姫は死んだような感情のない目で男に振り返る。
「さ、約束を果たしてもらいましょうか」
陽菜は思い出していた。
いままで思い出せなかった宝物のぬいぐるみの記憶。
さっきの女の子がくれたのだった。
あの雨の日、陸のときと同じ裕福な事で有名だった自分に絡んできた男女の不良たちを追い払ってくれたのだった。
(姫ちゃん……だっけ……)
まだ小学生だった自分が同い年くらいの女の子に初めて自分から聞いたから印象的だった。
(でも……どうして今まで思い出せなかったんだろう……?)
喜怒哀楽の激しい嫌でも印象に残るはずの姫の事を忘れるはずがない。
そして考えているうちにはっと気付いた。
姫は陸が探しているのを知って助けに来たのだ。
それでもって姫は悪魔。
陸と親しい関係にある可能性は非常に高い。
そして感情をそのまま行動に移す姫がなんらかのことで陸の家に土足で入り込む事も安易に想像できる。
(ということは……)
よってほぼ確実に昨日自分が陸の彼女だと疑ってしまった和佐の恋人は姫だということになる。
陽菜はさっきとは別の意味で頭が混乱していた。
毎日ワンクリック 長編小説ランキング
†ラブファンタジー†
祝80万PV突破キャラ人気投票(〜10/15)
みりんイラスト館
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。