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第七十四話
先ほど陽菜はそのことで電話をかけたのだった。
(いつまでここに居られるんだろう……)
疲れきった頭で考える。
陽菜にとって関崎を殴って逃亡する等ということは精神の自殺行為に近い行動だ。

ただ、それだけではなかった。
昨日陸が帰った後お母さんの部屋を見てみるとそこはもうもぬけの殻だった。
男の言ってた『逃げやがった』とはこのことだったらしい。
陽菜の心のダメージはそうとうなものだった。
それに今まで喧嘩もしたことがなく部活にも入ってない陽菜の体力はもう悲鳴をあげていた。
陽菜はすがるようにバックからぬいぐるみを出し抱きしめる。
いつ殺されるか解らないと昨日の事から確信した陽菜は大切なものはいつも持ち歩く様に決めていた。

冷たいコンクリートの上でいずれは見つかってしまうと考えると急に不安になる。
陽菜はポケットからくしゃくしゃになったメモを出す。
涙が出て来そうなのを必死で堪える。

『ごめん。でもお前が許してくれなくても俺は怒ってないから。だから……ちゃんとお前の力になってやるからな』

先ほどの電話でもすぐ行くと言ってくれた。
ここで諦めるにはまだ早すぎる。
(陸くん……、助けて……っ)

ガサッ

「居たぞ!!」

ビクンと陽菜はして振り返る。
家の前に居る男たちと似た様な男が一人立っていた。
陽菜は何も考えずに走って逃げ出した。



(どこだ……!?)
陸は冷や汗と汗が混ざったものでシャツをぐしゃぐしゃにしながら駅前通り走っていた。
陽菜が助けを求めるとすれば絶対ここらへんに居るはずだ。
人通りの多い中陸は立ち止まってさっきの電話の内容を思い出す。

『ごめんね……もっとちゃんと謝りたいけど……でも、もう無理、かも……』

疲れきった、昔戦いで痛めつけられた自分の声そっくりの声だった。
陸は人通りの少ない路地裏を歩く。
(…………?)
いつも誰もいないはずなのに数メートル先に人が居た。
陸よりも少し年上……和佐くらいの年齢の男たちが五人群がっていた。
陸はちゃんとうさみみをしていたので耳を澄ます。

「奴はこっちに向かってる様子だ、しくじるなよ」

「ったくあの女……逃げ足が速いったらありゃしない」

「所詮相手は中学生の小娘だ、本気でかかればすぐ捕まえられるだろうよ」

(女……中学生……? 陽菜のことか!?)
状況がわからない陸は彼らを監視する。
(まだ……陽菜が標的だと断言するには情報が少なすぎる……このまま見逃すか?)
そう思いかけていた時彼女は自分たちと違う普通の学校の生徒だということを思い出す。
今はまだ昼前。
普通、中学生は学校に居る時間である。
それはほとんどの確率で標的が陽菜だということの証明だった。
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