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第七十三話
「わかった、今行く」

陸は電話を切ると焦った様子で二人に言う。

「ごめん、用事できた、また今度な」

そう言い残すと走って店を出て行く。
他の客が何事かと行った顔をするがそんなことはどうでもいい。

「陸ちゃん……なんか忙しそうだね……」

和佐はその横顔を見て、聞く。

「そんなに心配ですか?」

「…………うん。なんか良くない事が起こりそうな気がする」

これは予言ではない。
ただの勘だった。
しかし、そんな勘にでも頼らなくてはいけないこともある。

「ごめん、和佐くん。ちょっと出かけてくるね」

そんな彼女に和佐はここぞとばかりに言う。

「今度埋め合わせにデートしてくださいね」

「今度は遊園地行きたいな」

満面の笑みで返した姫は店を出て行く。

「…………本当、二人ともそっくりですね」



姫はとりあえず淡紅外に出る事にした。
(あれ……前にもこんなこと、あった気がする……)
前というよりはわりと最近に。
確かあのときも変な勘がして外に出たんだっけ。
ぼやかる記憶を探る。
しかし頭の中に浮かぶのはバラバラな記憶の破片だった。
雨、傘、そして女の子。
自分はその子になにかあげた様な気がする。
だがそれ以上は思い出せなかった。
チクリと胸が痛む。

彼女に悩みがあるのだとすればそれはただ一つ。
記憶がたまに怪しくなったりとぎれとぎれになったりするとこだった。
思い出そうとすると頭が痛くなる。
しかし、感覚だけは覚えていた。
(私は――とてもあたたかくて、嬉しかった思い出を忘れてるーー)



陽菜は家のすぐ近くの民家の隙間に隠れていた。
家はすぎ目の前なのに、入れない。
見知らぬ誰かが居た。
男が二、三人。
どう見ても昨日の人たちの数倍は威圧感のある人たちだった。
(もしかして……あれが関崎さんの……?)
噂で聞いた事のある例の俗にいう"ヤクザ"と言う言葉が脳裏に浮かぶ。
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