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第七十話
「これでよし……っと」

紙皿の上にはプロ級に上手い陸によって作られたもはや美作と言っても過言ではないくらいのおにぎりが二つほどある。
巾着に入ってある発展途上国野宿用の炊きたてご飯で作ったものだ。
ちなみにとくに意味は無いが健全な日本人が好きな梅と鮭おにぎりである。
陸はポケットからシャープペンシルとこの前姫から貰ったかわいいうさぎの柄がプリントされたメモ帳を出す。
そしてなにを書いたのかそれをセロハンテープで皿に貼付ける。

「あとはこれを……陽菜の部屋の扉の前に置いておけばいいんだっけ」

とりあえずキッチンの周りを何事も無かった様に片付ける。

くぅうううー……

腹から情けない叫びが聞こえる。
(そういや俺まだ食べてなかった……)

結局陸は陽菜の家を出た後最寄りのコンビニでネギトロ巻を買って食べたのだった。


そして次の日。

「り……陸……なにか、あった?」

姫が心配そうに聞く。
授業の間の十分休み。
2−Cでは陸を中心とする半径三十センチが誰も近づく事が出来ない聖域となっていた。
いや、別に臭っているとかそういう訳ではない、勘違いするな。
ただ、それくらい陸のテンションがあり得ないくらい下がっていたのも確かである。

「別に……」

(嘘付け!! 明らかに声死んでるじゃんっ!!)

陸をリーダーとするクラスのメンバーはこの状況に困り果てた。
彼の(自称)イケメンの親友・和佐が耳元でこそっと聞く。

「あのあと陽菜さんと、何かあったんですか?」

ピクっと突っ伏していた陸が反応する。
(図星……ですか)
それをこっそり耳にした男子生徒・N君が興奮(発情)する。

「何なに!? 恋の話か!? 陽菜って誰……ぅっぷ」

すかさず陸がN君の顔面に蹴りを入れる。
しかし、タイミングが……遅かった。
クラスメイト全員が騒ぎだす。

「えーっ!! 嘘だろ!? 俺らの陸ちゃんに女の子が!?」

「確かに居ても不思議じゃないな」

「もうあれこれしたのかい、プレイボーイの陸ちゃん」

長年生きていても永遠のみなぎる思春期のクラスメイトみなさんは噂し始める。
陸はクラスの中で一番年下なので(飛び級してるから)みんなに勝手にかわいがられていた。

「ああ、もうどうでもいいだろ!! 勝手に興奮してんじゃねぇ!!」

ついに陸が怒鳴る。
それに男子生徒Nが羨ましそうな顔で言う。

「陽菜って誰? 乳デカい? どこまでいった?」

うん……一応女子(姫)居るんだからそういうこと言うのやめよう。
予想はしていたが姫がNのシンボルにドロップキックを入れる。

「嫌らしいのよこの変態!! っていうか女を胸で判断するな!!」

懲りてないエロ仙人Nはニヤニヤしながら言う。

「姫様ぁ、今僕ちん出ちゃったよ。もっかいやって〜」

「気持ち悪いっ、あっち行ってよ」

あまりにもアホな会話なので陸は飽きれていると、和佐が話しかけて来た。

「ちょっと来てもらえますか?」

返事もしていないのに勝手に和佐は腕をひっぱって教室を出て行く。
それに姫もついて行く。

「今から僕ら抜けますから、そこんとこよろしくお願いします」

軽く和佐は頭を下げると二人を連れて今度こそ出て行った。

「あーっ!! 抜け駆けー!!」

「陸ぴょんーっ、初エッチしたら絶対感想教えてくれよー、男の友情に秘密は無しなんだからなーっ!!」

クラスメイトとセクハラエロN伯爵(格上げ)の悲鳴が遠くから聞こえて来た様な気がした。
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