第六十八話
勝手に現れて勝手に消えるこの存在は戦闘スキルから感知、レーダーにもなるすごいヤツだった。
少なくても陸はそう思っている。
意思も普通の人とそう変わらない。
もし自分の中に居なければいい友達になれたかもしれないくらいだ。
これも奴がこいつに操りの式を打ち込むのを忘れてくれたおかげだ。
普通、"戦闘兵器"は作り主の操り人形である。
だからこそ"戦闘兵器"なのだ。
くぅー……
お腹が鳴った。
「あ……そういや、飯まだ食ってなかったんだっけ」
陸は後ろを振り返り、陽菜の部屋の扉を見つめる。
うちに連れて行くのは無理そうだ。
第一口を聞いてくれるかさえもわからない。
(陽菜も……お腹空いてるはずだよな……)
陸は覚悟を決めてキッチンを探す。
一階のリビングにそれらしき物があった。
ポケットから長年使って愛着のあるかわいい暖色の巾着袋を出す。
かつて和佐から『趣味も乙女なんですか』と言われて殴ったという懐かしい思い出のある物だ。
これはド○えもんのポケットほど優秀な物ではないが一辺五百センチの立方体の空間に繋がっており、そこに収納したものは先ほど陽菜が買ったコスメケースと同様入れた時と同じ状態を保つ。
ただし、この巾着袋の口の部分から入れられるものしか入れられないと言うのが欠点であるが。
その中から野宿用の紙コップと紙皿を出す。
やはり勝手に人の家の食器を使うのは避けたかったためだ。
それに……話を聞いている限り陽菜の母親はたぶん彼女を虐待している可能性がある。
先ほど背中を捲りあげた時背中の傷以外に事故ではつかないような古傷がいくつかあった。
母親以外の学校の人たちである可能性も少しはあるが、家の壁がところどころくぼんだ傷があるとこを見るとその可能性が一番高い。
もしここで勝手に皿を使って、間違って母親のを使ってしまったら陽菜が責められる事になる。
(陽菜……)
陽菜は自室で宝物のくまのぬいぐるみを抱きしめて、ベットの上で泣いていた。
なんであんなことしてしまったんだろう。
ちゃんと『いいよ』って言うつもりだったのに。
どうして言えなかったか、自分でもわかっていた。
その原因は……陸があまりにも平然としているからだ。
自分はこんなに……ドキドキして意識してるのに。
陸からそれが感じられない。
(わかってたよ……それくらい……)
どうしようもないくらいの悲しみがこみ上げてくる。
つまり……それは陸にとって自分は一人の異性として、恋愛対象として見てくれていないということだった。
最初からそう思ってもらえる、ましてや恋人になれるなんて思ってなかった。
傍にいるだけでいいって思ってた……はずなのに。
陸が中途半端な期待を与えるせいで諦められなくなった。
もしかしたら、って希望を求めるようになった。
決して……叶うはずがないのに。
少しでも期待してしまった自分が馬鹿だった。
所詮、陸に取って自分は"ただの中学生"、大目に見ても"友達"だった。
それ以上を望むなんてことは贅沢すぎる。
それでも陸は今まで友達すら居なかった陽菜にとって貴重な存在だった。
陽菜は涙でぐしゃぐしゃになった目でぬいぐるみに話しかける。
「もう……いいや……なんか、疲れちゃった……」
もちろんぬいぐるみは喋らない。
しかし、こうすることでなんとか気持ちを落ち着かせることができた。
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