第六十三話
陽菜の家はごく普通の一戸建ての家である。
二階建てのわりと豪華な家。
陸は誰もいないことを確認して降りる。
最も飛んでいる時は姿も気配も漏れない様にしているのだが。
「ここか?」
陸は聞く。
住宅地なので声を潜める。
「う……ん?」
おかしな物を陽菜は見た。
母親は携帯に届いたメールが正しければ今日は帰ってこないはず。
父親はとっくに死んでいて居ない。
陽菜は朝家を出たきり帰っていない。
の、はずなのに。
電気が付いていた。
おかしい。
どう考えてもおかしい。
朝ちゃんと消したはずなのに。
陽菜は恐る恐るドアを開ける。
ガチャン
「――っ!?」
鍵が、空いていた。
あまりの気持ち悪さに冷や汗が垂れる。
陸がその様子を見て聞く。
「どうした?」
「わからない……でも……陸くん、ちょっとここで待ってて」
陽菜は勇気を振り絞って家に入る。
人の気配は……しない。
やっぱり自分が消し忘れたんだ、そう思ったとき。
ぺた……っ
してはいけない音がリビングの方からした。
さっきまで普通だった空気が凍り付く。
ガチガチと震える足でリビングに向かう。
(確かめなきゃ……)
近づくにつれて震えは大きくなる。
陽菜は震える手で無理矢理リビングのドアを開けた。
カチャ……
何も、いなかった。
陽菜はとりあえず安堵する。
油断した隙を彼らは見逃さなかった。
陽菜のか細い腕を何者かにいきなりつかまれた。
「ひ……っ!?」
振り向いたその先にはまさに大男と呼べる目つきの悪いデカイ男が立っていた。
恐怖に声が出なくなる陽菜。
「捕まえたかぁ?」
後ろから声がしたので振り返ると大男の仲間らしき痩せこけた男が居た。
大男が返事をする。
「違う、ガキだ。たぶん奴の娘だろうよ」
舌打ちをする。
陽菜は意味が分からないので震える声で聞く。
「ぁ……あの……ど、どちら様……ですか……?」
手を離してくれない大男はニヤリと笑って答える。
「お前の母親の知り合いって所だ。奴め、子供を置いて逃げやがった、しょうがない、金の在処くらいは知っているだろう、教えろ」
「い……嫌……っ」
キリキリと腕に力が込められる。
ふり払おうとするが陽菜の力では無理だ。
痩せこけた男がポケットからライターを出す。
「言わねぇとどうなるか、わかってんだろーな?」
男はそのライターを陽菜の目すれすれの所に火を当てた。
熱さに涙がぽろぽろ溢れてくる。
陽菜は大きく息を吸って叫ぶ。
「嫌!! 助けて!! 助けて陸くんっ!!」
「てめぇ……っ」
大男が陽菜の腹を思いっきり蹴る。
そのまま壁にぶち当たって痛がる陽菜に大男はリュックから斧を出したその時。
バチバチバチッ
めちゃくちゃに火花を散らした陸が大男の前に立っていた。
左手に持っているのは……鉈。
陸は男たちを蹴りつける。
「な……っ!?」
先に口を開いたのは痩せこけた男の方だった。
ポケットから拳銃を出し陸に向ける。
「てめぇ、動いたら撃つぞ!!」
対して陸はそれをいっさい無視して陽菜にハンカチを渡す。
「目、それで隠しとけ」
無視された男たちは怒鳴る。
「聞いてんのか!? 撃つって言って……」
立ち上がった男の声は途中で途切れる。
彼らの目が大きく見開かれるのを見て陸は邪悪な笑みを浮かべる。
少し遅れて男が拳銃を持っていたはずの自分の右手を見て絶叫する。
「ぎゃあああああああああああああっ!!!!」
右手が、無かった。
床にそれらしき手が転がっている。
気がつくと、陸の手に握られていた鉈にべっとりと血が付いていた。
そう、陸が切ったのだ。
「あ……ぁ……」
「これ以上声だしたら、今度は左手が無くなるぞ」
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