第六十二話
(いったいいくら入ってるんだろう……)
陽菜は不思議に思う。
デパートのこといいやっぱり甘利財閥の力なのだろうか。
「陸くんって甘利財閥の一人息子、なんだよね?」
道ばたで聞いた噂が正しければそういうことになる。
でも陸たちが悪魔とかだった場合は……
「ああ、表向きにはそう言ってる。でも実際、甘利財閥は俺が作り出した組織だ」
(やっぱり……)
「ちなみに喧嘩して金奪いまくってたらいつのまにか大金持ちになってた」
(……うん、今すごい問題発言したよね、この人)
常識はずれの台詞に慣れてしまった陽菜は心中突っ込んでみる。
陸は準備ができたのか窓を開ける。
「行くぞ」
陽菜の手を取って今度は担ぐんではなく、お姫様だっこする。
そのまま壁を蹴って勢いをつけて飛ぶ。
「ひゃぁっ」
意外に強い風邪に驚く陽菜。
しかし、昼のときよりスピードを落としているせいか、あまり怖くはなかった。
恐る恐る下の景色を見てみる。
「わぁ……っ、奇麗……」
陽菜は初めてこの"淡紅の街"を見渡すことができた。
よく見ると案外小さい所だった。
しかし、それを忘れさせるほど奇麗で空気の澄んだ場所だった。
感動している陽菜を見て陸が微笑する。
「スカート捲れてるぞ」
「ぇ!?」
ギリギリショーツは見えてないがギリギリ太ももの上の部分まで捲れていたことに陽菜は気づく。
そして涙目で陸を睨む。
「見た……?」
「さあな」
ニヤっとした笑い方が憎たらしくてたまらない。
「も、もっと早く教えてよ!!」
「気づかない方が悪いだろ」
初めてこんな風にからかわれたので陽菜は反応に困ってしまう。
そんな陽菜に陸は爆笑する。
「な、なんで笑うの!?」
「だ、だってお前、今めっちゃおもしろい顔してた……ぷくく」
陽菜はムキになって陸のほっぺたをつねる。
もちろん思いっきりつねっているわけではないので痛くはない。
「でも……軽口叩けるようになったってことは……結構成長したんじゃね?」
陽菜は自分でも気づいていない成長に驚き、喜ぶ。
「そう……かな……」
陸は即答する。
「そうだって。お前初めて俺と会った時ガチガチだっただろ」
思い出して陽菜も笑う。
まだ一週間も前の話でもないのにずいぶん前のことに思えてくる。
「そう、だったね……」
「ただいまーです……っ!?」
結局和佐が帰って来たの八時半。
どうやら起きたらしい姫が玄関でお気に入りのウサギのぬいぐるみを抱きしめて座り込んでいたので和佐は驚く。
「ずっと……待っててくれたんですか?」
こくん、と黙って頷く姫。
和佐は熱い何かが心の中から溢れ出す感覚に襲われた。
靴を履いたままで姫を抱きしめる。
「夕飯、今日は僕が作ります」
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