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第六十一話
姫はただひたすら時を過ごしていた。
頭の中にはただ一つ。
(和佐くん……まだ帰ってこない……)
そろそろ五時、帰ってきてもいいはずだ。

「どこ、行っちゃったんだろう……」



「あ!? ああああああああああっ!!!!」

ようやく起きた陸は時計を見るなり絶叫する。
時計は午後八時を回っていた。

「やべぇ、夕飯作ってない!!」

陸は焦って立ち上がろうとして、思い出す。
陽菜が、詩文の胸に潜る状態で寝ていた。
(そうか……俺……陽菜に泣きついて……)
今考え直して陸は恥ずかしく思う。
年下の女の子に、陽菜にあのみっともない泣き顔を見せてしまったのだ。
(恥ずかしい……恥ずかしすぎる……)
そして最後に陽菜が自分にいったことを思い出す。
『一緒に、強くなろう』
陸はやさしく微笑み、言う。

「ありがとう、陽菜……」

思えば陽菜に何かも知られてしまった訳ではない。
ただ、芯の部分を見透かされただけなのだ。
陸は安心して陽菜を揺り起こす。

「陽菜ーっ、もう八時だぞー」

『八時』と言うワードに反応して起きる陽菜。

「八時!?」

「ごめん、家……連絡しなくて大丈夫か?」

「うん、今日は帰ってこないみたいだから」

陸は安心したようによかった、と零す。
もしこれで陽菜が親に怒られでもしたら大変である。

「あれ……? ってことは今日夜、一人?」

「? うん」

何を言いたいのかよくわからないのでとりあえず返事をする陽菜。
そんな彼女を陸は誘う。

「今日、家泊まっていくか?」

「ぇ? ぇええええええっ!?』

(それは……つまり……)
陽菜は顔をリンゴみたいに真っ赤にして考える。
陸は陽菜の反応にやや悲しそうに、

「嫌なら断ってもいいけど……」

などと断れないような発言をする。

「嫌じゃないよ、でも、でも……私……着替えとかもってきてないし……」

陸はにっと笑って得意そうに返す。
さっきまでの悲しそうな顔は嘘の様に消えすっきりした感じだ。
(良かった……)

「それなら大丈夫、お前柏葉中だろ? ならそんな遠くないよな、連れてってやるから服取ってこい」

(と、言うことは……)
陽菜は今日の恐ろしい記憶を思い出す。

「ま、また飛ぶの……?」

「安心しろって、今度は速度落とすから。それに夜は夜景とか見えて奇麗だぞ?」

夜景の誘惑で陽菜は頷いてしまった。
陸は満足そうにぼやきながら財布をポケットに入れる。

「夕飯もついでに買ってくるか」
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