第五話
「淡紅……」
陽菜もその地区の名前は知っていた。
凡人が立ち入ることができないということも。
「そうだ、淡紅だ。ちなみに俺は中等部から入ってるからもう4年くらい、通ってる」
そういった陸の目はどこか遠くを見ていた。
陽菜ははじめて陸をよく見た。
あどけなさが残る童顔。
かっこいいというよりはかわいいといった方が適してるかもしれない。
栗色のやわらかそうな髪の毛、白い肌、茶色の瞳。
名前を聞いた限り日本人だと思っていたが、もしかしたらハーフなのかもしれない、と陽菜は思った。
「ん? 何? 俺の顔になんかついてる?」
と、陸は男の恒例の見つめられたときの対応術をなにげに使ってみて、
「ぁ……」
予想道理思いっきり目をそらされた。
(落ち込むな、俺、きっとさわやかな未来が待ってるぜ)
陸は自分でも意味のわからないフォローを自分に言い聞かせた。
明らかに目をそらされたことに落ち込む陸に陽菜は、
「あ、あの、ちがうの!! 嫌だったんじゃなくて、その……恥ずかしくて……」
陽菜の顔がだんだん朱に染まってゆく。
キョトンとしていた陸の方も陽菜の目がかすかに潤んできたくらいで、わかった。
「陽菜、お前もしかして、かなりの人見知り?」
……図星。
「う……」
ばれた!という顔になる陽菜。
(ビンゴ!!)
なにげに当たったことへの喜びを心の中で零す陸。
「いやー、そうだったのか、なんなら先に言ってくれれば……」
笑顔を崩さずまま言った。
「だって、だって……なんか恥ずかしくて……」
と陽菜はか細い声で言う。
「人見知りは、恥ずかしいことなんかじゃないんだぞ」
「ふぇ?」
陽菜は少し驚いた。
今まで母親も、先生も、「恥ずかしいこと」や「だらしないこと」などと言われてきたのに。
「学校、楽しいか?」
不意に陸が聞く。
陽菜は陸に嘘をついてごまかせる気がしなかった。
「正直……あんまり楽しくない……かも」
陽菜は初めてこのことを他人に言った。
「そっか……」
と言い残すと陸はバックからノートを出しはじをちぎった。
そしてボールペンでなにやら書いている。
不思議そうに見つめる陽菜に書き終わった陸はその紙を渡した。
「平日はだいたいそこにいるから暇ができたら、来いよ」
陽菜は一瞬キョトンとして、それから自分でも感じたこと亡いうれしさがあふれ出てきた。
「い、いいの?」
あからさまにうれしかったのが顔にでてたのか陸は笑い、
「ぜんぜんかまわないって。いつでも来いよ。相談とかあったら聞いてやるから」
と言った。
陽菜は胸がいっぱいいっぱいになった。
言えることとといえば、
「行く、絶対行くね」
これくらいしか言えない。
陸はそんな陽菜の心情に気づいたらしく笑顔で手を振った。
「じゃあな」
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