第五十八話
「ん? 何?」
視線に気づいたのかまりもの方を振り返る。
まりもは鈍感な陸を無視して陽菜の方に歩み寄る。
「貴方……隊長の恋人じゃないんですよね?」
「は、はい」
まりもが歩み寄って来たことでまりもが自分よりも小さいことがわかった。
よく見ると顔つきも少し幼い気がする。
(あれ……この子もしかして年下?)
そのまりもがほっとした様子で言う。
「良かったー、だったらいいんです、さっきまでごめんなさい、神崎まりもです」
どうやら彼女の方も混乱していたようだ。
笑ったまりもを見て陽菜は思う。
(かわいい子だな……)
陽菜も礼儀正しくあいさつをする。
「あ、ぅ……えっと、鈴風陽菜です」
少しぎこちなくなってしまったが相手が年下(と陽菜は間違っているが実際はこの時は同い年)だったのでそこまで緊張しなくて済んだ。
「よろしくね。あー……私どうかしてたかも。そんなこと言ったらいつも隊長に抱きついてる姫さんだっているのに……あ、エレベーター来たね、それじゃ、またね」
まりもは恥ずかしそうに手を振ってくれた。
陽菜もつられて振る。
陸の方は先ほどの会話の意味がわからなかったのか首を傾げている。
(あの子も陸くんのこと、好きなんだ……)
エレベーターの中、陸はそっと陽菜はに言う。
「よく、がんばったな」
陽菜にとって知らない人にあいさつをするのはとてもハードルの高いことだというのは解っていたからだ。
ほめてくれている陸に陽菜は聞く。
「あの子……私より年下……だよね?」
もしそうでなかったら陽菜は恥ずかしい間違いをしたことになる。
「んーと……お前次中二だろ? ってことは……まぁ今はお前の方がちょっと年上だな」
「ちょっと? あ、あと陸くんあの子に"隊長"って呼ばれてたけど……」
陸は迷った顔をして陽菜を見る。
(まぁ、もうほとんど俺らのこと知っちゃったんだし話してもいいか)
「俺が人外で悪魔だってことは和佐に教えてもらったんだよな?」
聞いていることと全く別のことを聞き返されたので陽菜は不思議そうな顔をして一応こくんと頷く。
「さっきまりも意外にも何人か黒い服着たヤツ居たろ? あいつら全員俺も含めて"黒狩人"って組織なんだ。悪魔の中で最も大きい組織。そこの隊長が俺なんだ」
初めて聞く事実に陽菜は驚く。
(あ、でも和佐さんが言ってたこの街のボスが陸くんだってこと……本当だったんだ)
自分が自分ととても釣り合わない位の高い人を好きになってしまったことを初めて実感する。
「それで……あ、年齢の話だったな。俺ら特別攻撃部隊は当たり前だけど戦闘力を維持しなければならないんだ。もともと悪魔は人間の五分の一の速度で老化する種族だが……老化するとそれだけ戦闘力も落ちる。だから俺らは一時的に心身の成長を止めている」
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