第五十五話
彼女の世界最強の戦闘力の源であり彼女をここまでボロボロにしたモノ。
捨てたくても捨てることのできない一生背負わなくてはいけないモノ。
これが自分の中にあると知ったのはつい一年前である。
自分の記憶が途切れたと思ったら手が血で染まってたり、和佐や陸が大怪我していたりした。
二人とも話してくれなかったがアレは明らかに自分がやったことである。
その証拠に攻撃したその感覚がまだ体が覚えている。
中には少し覚えているときもあった。
ほとんど意識のない中自分の体が自分以外の誰かに動かされている記憶が。
そして意識が戻った時悪夢が始まる。
殺してしまった感覚と幻聴、幻覚に襲われて自分が自分でなくなる。
考えるだけで頭が痛くなってくる話だ。
姫は大切な、大切な人の名前を助けを求める様に口ずさむ。
「和佐――くん……?」
おかしい。
いつもだったら傍に居るはずなのに。
姫はリビングの食事テーブルを見て少し心に痛みを覚えた。
そこにはコンビニかなんかで買って来たらしい姫の好きなとりめし弁当とさっき買ってくれると約束したショートケーキが置いてあってその横に……一枚のメモが置いてあった。
姫はその紙を読む。
(寂しい、なんて思っちゃ駄目……)
『少し外出してきます。 和佐』
(鏡のヤツ次会ったらパンツ一枚でグラウンド十周させてやる……っ)
先ほど放心状態の陽菜と食事を終えた陸は心の中で鏡を呪った。
食事中はほとんど無言かあたりさわりのない会話で陽菜はまだ脳内パニックに陥ってるようだ。
仕方が無いので声をかけてみる。
「な……陽菜」
「は、はぃ!? な、なんでしょう!?」
予想以上の反応に陸はなぜか苛つきと似たモヤモヤした感情になる。
(そんなに鏡のこと、気になるのかよ)
そんなことを心の端で思い、慌てて考え直す。
こういう所は和佐と違い冷静に自分の心情と向き合える陸ならではのことである。
(落ち着け……どうして俺が陽菜に苛ついているんだ?)
自分自身に問いかける。
陽菜が悪い訳ではない、ということは明白だった。
そういう状態の陸を察したのか陽菜はこれも本日何度目か謝る。
「ぁ、あの……また私、陸くんの機嫌悪くしちゃった? ご、ごめんなさい……」
陸はそれを聞いて焦る。
「い、いや、何でも無い。とにかくお前が悪い訳じゃないから!! っていうか今のは確実に悪いの俺だし……その、ごめん」
陽菜は表情を緩める。
どうやら安心したようだ。
そんな陽菜の顔を見て自分がどうして苛ついたのかが解った。
自分は陽菜に嫉妬していたのだ。
(本当、情けないな……)
今の陽菜の笑顔は自分へのものである。
鏡や他には見せない、自分だけの物。
そう思ってもう一度陽菜の手を握ろうとした時、
「っ!?」
突然頭の中が真っ赤に塗りつぶされた。
陸は反射的に陽菜の手を離す。
(こ、これは……!?)
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