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第四十七話
陽菜は少しホッとする。
そして重大なことに気がついた。

「陸くん……私さっき和佐さんと喧嘩(?)しちゃって……謝りたいの……」

「あ、ああ、さっきのセクハラのヤツか。ん、わかった。今電話かけてやるよ」

陸は制服のポケットから携帯を出す。
陽菜が陸の制服のシャツの裾をそっとつかむ。
どうやら緊張しているようだ。
たぶん喧嘩をしたのも初めてだったのだろう。
そしてその予想は図星だった。

「大丈夫だ、最初俺が出るから」



「喧嘩!? 和佐くんが珍しいね」

「誰と喧嘩したんですかー」

おもしろそうに訪ねる二人に和佐は困る。
(こ、ここで陸の名前出したらすごいことになりそうです。だからと言って陽菜さんの名前出すのも……)
仕方が無いので話をそらす。

「いいんです、全て僕が悪いんです……」

嘆く和佐に十夜本当に言わなくていいことを言う。

「どうせまた女の子にセクハラしてその彼氏と喧嘩しちゃったとかじゃないですかぁー?」

(うわっ、性格悪っ)
うんざりして隣を見ると姫がすごい顔になっていた。

「か、和佐くん……私の事なんてもう……飽きちゃったの?」

震える口で無理矢理言ったのでとぎれとぎれになっている。
和佐は覗き込んでようやく姫が泣いている事に気づき焦る。

「ち、違いますよ!! 十夜くんっ!! 何いい加減な事吹き込んでるんですか!!」

姫は泣き止む気配がない。
今まで何百組ものカップル、夫婦を別れ、離婚させてきた疫病神・十夜はニヤニヤしながら「あーあ、泣かしちゃいましたね〜♪」等とほざいて……いや、言っている。
この地獄的な状況をなんとか破る手はないのかと五歳の小さな脳みそで必死に探す。
ちょうどその時。

ピリリリリ……

和佐の携帯がこの場の空気を切り開く様な形で鳴り響いた。
(す、救われた……)
着信相手は陸と表示されている。
慌てて和佐は通話ボタンを押して叫ぶ。

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさぃいっ!!」

「ちょ、落ち着けって、あ、あと陽菜も謝りたがってるから変わるな」

和佐はドキドキしながら姫の方に目を向ける。
内容は聞こえていないようだが、声は漏れているので相手が陸だとわかったらしい。
泣き止んで不思議そうなまなざしを向けてくる。

「あ、鈴風です……さっきは、ごめんなさい。ちょっと怖くて……」

「いえ僕が悪いんです!! 悪魔止めてトイレの精霊になるから許してくださいー」

「ぷっ……ト、トイレ……そんなのにならなくても……本当にもう嫌とかそういうのじゃないから……」

笑う陽菜の声が聞こえた。
和佐はそっと胸を撫で下ろす。
そんなとき、その安心をぶちこわす唯一の半端な悪魔(心は最高に邪悪なマジもんの悪魔)が和佐の携帯を取り上げる。

「ふっふっふ……久々にいい獲物見つけた気がしますね」

にたにたと嫌らしい笑みをこぼす十夜。
そんな彼の気配を音で察したのか電話には陸が出た。

「なっ!? 十夜!? お前もしかして今の会話全部聞いてたのか!?」
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