第四十四話
帰り道。
「ったくあなたって人は、ちっとも成長してませんね」
あきれた、と吐く十夜。
あのあと姫の壊した部分を修正させられたのだ。
姫は戦闘力、攻撃力はとんでもない莫大な力があるが、その他のスキルは無いに等しい。
そんな彼女に嫌みを言う。
「成長する栄養全部胸に直結しちゃってんじゃないですか?」
言いながら、高校生にしては並以上のふっくらした胸を見る。
自分でもそこは気にしていた所だった。
身長も小さく、精神年齢も幼い、なのに胸だけは……。
「そういうあんたもそのデリカシーのなさ全然変わってないね」
いっその事このまま殺しちゃおうか、という風に言う姫。
十夜の方もそれに気づき焦って誤摩化す。
「ははは、たぶん一生直らないと思いますね」
認めてたのか、と姫は内心驚く。
彼の性格の悪さはその強さの何倍も噂が広がっている。
陸が前に『あいつのせいで悪魔=性格悪いとか思ってるヤツ結構いるぞ』と言っていたくらいだ。
そんな中、ふと誰かの鳴き声の様な音が耳に入った。
「う……っ……くっ……ふぇ」
近くの公園の公衆便所から聞こえてくる。
「今時公衆便所でぐずるなんてどこのガキですか」
「十夜くん、口調戻ってるよ……」
悪魔は基本的に口が悪いのでそれを直して暮らしている。
陸のような例外もいるのだが。
「いいじゃないですかー。僕もあっちではずっとこの口調でしたしー。僕だってハメ外したい時もあるんです」
プイと顔を背ける彼はどう見ても普通の小学生である。
そんなギャップに思わず姫は吹く。
「あんただって初めて私と会った時あんなんだったじゃない」
「そ、それは……だってあの時のあなたの殺気がですよ!! 僕知ってますよ!! あなたの殺気でちびった人居るって!!」
「はいはい汚い話はやめようねー」
「それで、結局誰なんですかこの声の持ち主は。こういう声聞いてると虐めたくなるんですよねー」
さらっと問題発言をする十夜。
口元が横に広がってる様子はもう完璧なサディストだ。
性格悪オーラ全開だね、と姫があきれる。
「ちょっとのぞいて見ようか」
(こんなに……小さかったんだな……)
抱きしめて、初めてわかった。
陽菜の小ささ、今にも崩れてしまいそうな弱さ、暖かさ。
大切な、大切な人のぬくもり。
とても心地よい時間だった。
(こういうのが……いわゆる"恋愛的な感情"なのか……?)
陸は初めて気づいた。
以前泣いていた姫をこんな風に抱きしめたことがあった。
でもその時は「かわいそう」とかの同情はあったもののここまで「心地よい」とかは思わなかった。
それは姫が泣いていたからかもしれないが確かに何かが違った。
同じ"大切な人"のはずなのに。
ピロリン
「ひゃ!?」
「あっ!?」
陽菜のスカートのポケットから音がした。
瞬間、二人は同時に我に戻り離れる。
どっ、どっと痛いほど鼓動が鳴る。
(ちょっとまて、今俺は何をした!? 陽菜を抱きしめ……っ)
恥ずかしさのあまりどんどん体が熱くなっていく。
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