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第三十七話
ここは路地裏……だった所。
だがもう路地裏とは認識できないほど悲惨なことになっていた。
壁は真っ赤に汚れ、倒れる死体。
その中に一人の小さい少女と男の子がいるという異常な光景である。

「今日の収穫はどれくらいなんですかー」

微笑んで聞く十夜。
彼の通り名は”狂人”。
どんな人や化け物であろうと微笑んで迷わず殺すという世界に名のある殺し屋。
そしてもう一人……。

「うーん、わかんない。とりあえずこいつら合計で五万ってところかな」

小さな、しかしそれさえも気に留めることのできないくらいの存在感を纏う姫。
彼らの血に染まった左手を舐める。
彼女は悪魔でありながらその中でもかなりの戦闘力を誇る吸血鬼の末裔である。

五万とは殺された彼らの財布の中身である。

「っていうか前から聞きたかったんですけど……血ってそんなにおいしいんですか? 鉄臭くありません?」

いつもの様に嫌みを言う十夜。
そうだ、こいつはそんなやつだったと姫は思い出した。

「ちょっと臭いけど私これなしじゃ生きてけないんだよね」

手がベトベトするのが気持ち悪いのかライターで手に火をつける。
彼女の生まれつきの能力は火を無効化にすることである。
よって彼らの血だけが焼け、火は消える。
姫は制服のポケットからタバコを取り出し火をつける。

「そういえば先輩ってヘビースモーカーでしたっけ」

十夜は今更のように言う。

「鏡くんよりはマシだよ。これでもだいぶ我慢してるんだよ?」

「でも世界最強と言われている戦闘魔がヘビースモーカーってどうなんですか」

姫は攻撃、戦い方面に見れば世界一位(本人はそうと思っているが、実はもう一人いる)だ。
もう顔さえも思い出せない姉よりも、神よりも強い。
それは圧倒的事実だった。
だが、それでも彼女はリーダーになれない。

「戦闘魔とは失礼ね」

彼女は自分の能力をコントロールできていない。
だから感情等に大きく左右されて暴走することも多い。
しかも彼女の一番致命的欠陥は……。

防御がいっさい使えないと言う事だった。

彼女の能力は人を攻撃し、殺す為の能力は自分を、誰かを守る為にある物じゃない。
だから共戦などはか戦闘面でなり名のある人か、防御中心が得意な人ととしかできない。

「じゃ、掃除するから十夜くんはあっちに避難してて」

姫はそういうとバッグからボトルを出す。
普通のサイズの霧吹き。
それを倒れた死体に吹きかける。
中身は、ガソリン。
準備ができたので姫は少し遠ざかり、別れを言う。

「さようなら……」

瞬間姫の手から出した紅い、紅い炎の玉が投げつけられすごい勢いで炎が膨張する。

パチン……っ

そして、姫が指を鳴らすと同時にさっきまでの惨劇が嘘のように跡形も無く消える。

姫の通り名は"炎の女神"。
悪魔を軽く超えるその戦闘力は神に等しい。
彼女の足下にはさっきまで転がってた死体の代わりに灰が落ちていた。
超高温の圧縮された炎で焼いたので骨すら残ってない。

「ありゃ、失敗しちゃった。道まで溶けちゃったよ」

姫はギリギリかわしたが、灰の下のコンクリートはやはり溶けていた。
姫は、シクった、と思い後輩を呼ぶ。

「十夜くんー」
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