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第三十五話
理事長室を出てから数十分後。
(あーあ……嫌なモンつかっちまった)
少々機嫌が悪い陸。

陸はあまり簡単に瞬間(空間)移動を使いたくなかった。

一見かっこよく見えるこの能力は自分の意志で体を一回分子の形に戻してかつ光の何倍もの早さで移動させなければならない。
なので膨大な力と集中力が必要である。
短距離しかできないのはもちろん失敗したら取り返しのつなかいことになってしまう。
なので極力陸はこの能力を使わないようにしている。
電撃使いの陸はともかくプロのテレポーターでもかなりの集中力が必要で事故もしょっちゅうだと聞く。

「さーてと、お土産になんか買って来てやるか」

陸は近くにあったコンビニに入った。
涼しい空気が陸を迎える。
「いらっしゃいませーっ!! ってあれ? 陸さん?」
聞き覚えのある声が聞こえた。

「つ、つかさ!? なんでここに!?」

キョトンとした顔でこっちを見る少女・鏡つかさ。
兄同様プラチナブロンドとか言うらしいセミロング丈の金髪と奇麗なオッドアイが印象的だった。

「バイトなのー。陸さんは?」

にこにこしながら訪ねるつかさ。
こういうところは鏡(兄)にはないよなーと少し心を癒しながら陸は答える。

鏡家は一家そろって死神だ。
一家といってもつかさと兄・つばさだけなのだが。
普通、死神と悪魔は仲が悪い。
歴史的にもそうだし、死神と悪魔に限って言うことではないが話の基準がちがうというか……文化が違うのだ、いろいろと。

「客が来てるからお土産っていうか、出す菓子買いにきた」

陸はキョロキョロと店内を見回す。
つかさはさっそく仕事としてオススメを紹介しておく。

「これなんてどう? 激辛ポテチ。結構人気あるんだよ」

つかさは差し出す。

「うーん……」

果たしてこれを陽菜が気に入るか。
陸の陽菜のイメージからはこのスナックは果てしなく離れているような気がした。
というかはっきり言ってこれは男同士で罰ゲームとかやるとき使う菓子なのではないだろうか。
まぁ姫辺りなら喜んで食いつきそうだけど。

「ありゃ、選択まずかったかな……」

少し気を落とすつかさ。
陸はそれに気付き、慌てて弁解する。

「い、いや、俺が嫌いなんじゃなくて……その、客が女の子だから……」

「ぇ……? ぇえええええええっ!?」

一瞬ポカンとなって直後驚きの声をあげる。
確かにこの前姫からそのようなことを聞いたような気がした。
が、つかさは普通にいつもの勘違いだと思っていた。

「じゃ、じゃあ姫の言ってたことって……本当!? り、陸さん!! い、いやらしいことしちゃだめだよ!! 男の子にとっては……その、気持ちいいことかも知れないけど!! 女の子は痛いんだから!」

真っ赤になって説得するつかさ。
陸は一瞬なんのことかわからなかった。
(痛い? 俺にとって気持ちいい? 一体なんのこと……ッ)
ようやくわかった。
たちまち陸の頬が紅潮しはじめる。

「ば、馬鹿!! な、なにいってんだよ!! んなことするわけないだろ!?」

即座に陸は否定する。

「っていうか……まだつきあってもねぇのにんなことするかよ!! どれだれ俺は信用されてないんだ!!」

つかさは陸の発言のペナルティを一秒もたたずに発見した。
こういう所は兄ゆずりである。

「『まだ』? ってことは陸さん片思いなんだね♪ あははは、私的に陸さんほど片思い似合わない人とかいないんじゃないかなーと」

けらけら笑ってからかうつかさ。
彼女にとって陸以上にからかうと面白い人物はいない。
陸は真っ赤になって顔を背ける。

「べ、別に俺が片思いしよーがどーでもいいだろ!? だ、だいたいこれから両思いになるかも……しれないのに……」

自信なさげにどんどん声がか細くなっていく。
(ははあ、これは完璧に恋の病ですなあ……)
つかさはぷくく、と笑う。

「ぷはは、まあがんばってくださいよ、高等部生徒会長さん♪ いやー、それにしても傑作だよ。お兄ちゃんにチクっちゃおうかな……」

つかさはさらりと問題発言をする。
彼女は中等部副生徒会長なのである。
陸はそれを聞き逃さなかった。

「ちょ、それだけはやめてくれ!! マジで氷付けにされるか校内放送でネタにされるかだから!!」
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