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第三十三話
「で、この俺様をよりによってタイミングで呼び出した理由は?」

どうせどうでもいいことなんだろう、と陸は推測する。
今までリシャールに呼び出された内容の九割はほぼどうでもいいことだった。
そしてその予想は運悪く適中する。

「……陸ちゃん。最近黒タイツ萌えがキてるんだ……。どうだ? 試しに着用……」

バチバチッ

リシャールの発言は陸の発生させた強力な電磁波によって遮断された。

電磁波が互いに摩擦、ぶつかり合い火花が散る鋭い音が室内に響く。
さすがにこれ以上発生させると自分の体に傷が付くのでそのへんは制御するしかない。
彼が本気になればたかが人間一人なんて骨まで跡形も無く消し去る事くらい簡単である。
最もリシャールの能力は一般人の数百倍の防御力なので殺せるかどうかはわからないが。

「誰が着用するか、ボケ」

今度はリシャールでも少し焦る。
「ご、ごめんって!! いや、だって似合うかなーと……」

陸はあきらめた。
(ダメだ。こいつとは会話になんねぇ……)
たぶんこれから何千年経って死んだ後でも一生わかり合えない人間っているんだなーと陸は素直に思った。

「じゃ、俺用事あるから帰る」

「ぁあっ!! まだ話したい事が……」

リシャールが引き止めた頃には陸の姿は無かった。
たぶん瞬間移動でも使ったのだろう。
彼はニヤニヤしながら室内の右上の角に手を伸ばした。
陸は気づかなかったようだが枝豆くらいのサイズの隠しカメラが付いている。
リシャールの陸を呼び出した理由、その真の目的は……

隠し撮りした陸の画像を合成して女装させることだった。

世界一変態能力者で知られる理事長(黒狩人情報部)リシャール=アッシュは今日も変態ライフを過ごしていた。



「これどうぞ」
「ありがとう」

和佐が陽菜につぶつぶいちごポッキーを差し出す。
こちらの二人はようやく落ち着いて話せる空気になっていた。

あれから和佐は陽菜に自分のこと、陸のこと、異能力のことを話した。
幸い陽菜は余り驚かず、逆に興味ありげなキラキラした目で聞いてくれた。

「私ね、昔からそういうのに憧れてたの。本当に魔法とかあったらいいのにな、とか。でもお母さんや学校の先生はそんなものあるわけがない、いつでも夢ばかり見るなって言われちゃって……」

尊敬のまなざしで和佐を見る陽菜。
和佐は陽菜の気持ちがなんとなく共感できた。
彼は六歳のとき無理矢理薬品を注射されて能力を得た。
ただ普通の人と違う所は捨て子だったと言う訳だ。

「人間とはそういうものです。目にある物しか信じない、信じる事ができない。心が狭過ぎますよね」

ややあきれるように言う和佐。
彼にとって人間はやはり汚い物にしか見えない。
確かに自分たち(人外)でもそういった感情のいざこざはあるが、それでも人間よりはマシだと思う。
捨て子と言う経歴があるせいか、今でも人は信じれない。
ただ陽菜のような子は嫌いじゃないな、となにげなく思う。
和佐の知る人間は、馬鹿にされたくないから馬鹿にする、信じられないから信じている人を嫌い、攻撃する。
そんな生き物だと思っていた。

(案外この子こっち向きかもしれませんね)

やっと和佐は陸が陽菜を気に入った理由が見えて来た。
しかし彼はうれしそうに言う陽菜に少し忠告しておく。
何事も真実とは厳しい物だ、と改めて和佐は実感した。

「ですが、貴女が想像しているメルヘンの世界とは少し異なりますね」

「ぇ……?」
陽菜は食べていたポッキーを落としそうになった。
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