第三十一話
「あ、あのー……陽菜さん?」
和佐はなんとかこの空気を変えようと声をかける。
「んひゃっ!? なっ、なんですか?」
応答した陽菜の声は見事に裏返ってしまった。
(ああ、そういえばこの子人見知りなんでしたっけ)
和佐は心中思い出す。
陽菜にとってこの無駄に色気ムンムン、おまけに芸能人のような整った顔つきの少年はハードルが高すぎたらしい。
和佐の方も今まで同じようなことがあったので薄々と気づく。
(まぁ、これではまともに話せませんし……。しょうがないです)
彼は覚悟を決めて全身に力を入れる。
瞬間霧の様な煙に包まれる。
(この感覚、いつになったら慣れるんだろ……)
横を見ると陽菜が絶句してるのが視界の端に見えた。
そして、さっきまでの姿が嘘の様な小さい陰が浮かぶ。
お人形みたいな大きな目、三頭身くらいしかなさそうな和佐(五歳バージョン)が口を開く。
「これで、ちゃんと話せますね」
口調は十五歳バージョンとあまり変わらない。
陽菜は大きく目を見開き声を零す。
「え!? ふぇえええ!? か、和佐さん!?」
一歩遅れて悲鳴をあげる陽菜。
ごく普通の一般人なら当たり前の反応である。
(あれ? この子異能関係者じゃないですね)
しくじった、と思ったが心の端で「まぁ、いいか」と一人で流す。
てっきり陸が連れてきた=異能関係者と勝手に認識していた自分が甘かった。
そんなことを考えながら、陽菜に和佐は平然という。
「僕が和佐です」
その頃、淡紅外のショッピング街に息を切らせた小さな女子高校生と変な格好の男子小学生が歩道で立ち止まっていた。
無論、その二人とは姫と十夜である。
「な、なかなかやるじゃない……っ」
「え、ええ。僕も、毎日トレーニングしてますから……っ」
二人ともさすがにいきなりの全速マラソンで疲れきってしまった。
いくら春だと言っても晴天の日の朝。
これでは世界の五本指に入る最強(狂?)の神でもバテてしまう。
どうしてこのようなことになってしまったかと言うと長くなるが一応簡単には言えないが説明しよう。
陸の家を出て数分経った後。
十夜が不意に姫にかっけこの勝負を挑んだ。
超負けず嫌いの姫はもちろん勝負してみたが……負けた。
というか、足の速さで十夜に勝てる二足歩行の生物がいたら冗談じゃない。
はっきり言って、五十メートルを約四秒で走るガキなんて怖すぎる。
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