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第六章 風邪……?
第二百九十五話
 淡紅学園のバカみたいに広い校庭(の様なもの)の端にひたすら目立つ陰が二つ居た。
 一人は中学生くらいの東洋系の少年。
 もう一人はツインテールのナイスバディな『女子高生』。
 先に口を開いたのは少年・甲斐火炉の方。

「さて、ここまで来た訳だが……」

 甲斐は校舎に向き直り、思いの丈をぶつけた。

「なんで制服強制着用なんだくそォォオオオオオオオオッ!!」

 そう、彼らが今部外者も多いはずの学園祭で目立っている理由の一つは二人の服装である。
 全校生徒数千人と組織上の最大規模を誇る白鸚学院の名物である『制服』だ。
 特に甲斐の着ている中等部制服(学園長命令と彼のサイズがなかった為)は、基調とした燕尾服をベースにしたアンティーク系であり、シルクハットも着用しなければならないとの規定もある。
 ちなみに甲斐の制服には、通常のタイではなく嫌みなほど目立つえんじ色の可愛らしい大きめのリボンになっていたり、シルクハットに羽やら花やら付いて派手になっていたりと、不思議の国のアリスに出てくる白ウサギを連想させる様なデザインになっている。
 白鸚の学園長の愛が無駄に注ぎ込まれていると言う噂が時折耳に届くが、気にしないでおこう。
 肩をガックリと落として暗いオーラを発する甲斐に、向かいに居た少女・ミザリーがせせら笑う。
 彼女も紅白ストライプのスカートが映える制服だった。

「ぷっ、白梨様が決めたんだからしょうがないのさー、ねぇ? はく……」

「それ以上言ったらぶっ殺す!!」

 キッと鬼の様な目で睨んでくる甲斐。
 ミザリーははぁーっとため息をつき降参のしぐさをする。

「そんな所で兄弟の血を見せつけても何にもならないって事に気づいてほしいさー……今回の任務はクーデターとかじゃないんだからさ」

 そう、今回の任務は全回と違い『あの人形』を持って学園祭を回ると言う地味な任務だった。
 ちなみに言えば、その深い真相は当人二人には全く知らされていない。

「……一応聞くけど、お前なんで格好してるんだ?」

 いつものちびっこポンチョ少女から一変して、今日のミザリーはどこからどう見ても大人びた(特に胸)高校生である。
 甲斐の予想としてはユリウス作の変な薬でも飲んだのだろう。

「え? ナンパの為だけど?」

「何か趣旨ちがくね?」

「さー?」

「……何でもない」

 何を言っても無駄だと諭した甲斐は、嫌々立ち上がり校舎の方へ足を向ける。
 甲斐には到底ミザリーの様に気楽に回れる自信がない。

「……っ、だいたいお前もしナンパした相手が甘利陸だったらどうすんだよ? お前に巻き込まれて一瞬で肉片になるとか俺は嫌だぞ?」

「いや、そこは大丈夫でしょ、普通に同盟組んでるんだし……てゆかミザショタ萌えじゃないし」

「……」

 甲斐の疑惑その2はあのデータで見た甘利陸の画像が本物であるか、だ。
 他と比べて芸能人等が極めて多い淡紅は、顔や体を整形している者も少なくないと言う。
 それに甲斐にはあの写真に映っている自分より幼そうな少年が、甘利陸だとは思えなかった。
(絶対影武者とかが居る……)
 そんな事を思っているうちに校舎の前に着いた。
 ミザリーが確かめる様に言う。

「準備はいい?」

「ああ……」

 現地時刻十時三十八分、淡紅に二人のスパイが入り込んだ。
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