第二十九話
陸は訳が分からないので聞く。
「な、なんで謝るんだ?」
陽菜は答える。
「だって……だって……私のせいで、陸くんとあの子と仲悪くなっちゃう……」
陸はだいたい陽菜の言っている事がわかってきた。
「いや、別にあいついつもあんなんだし」
「で、でもっ……別れちゃったりしたら……っ」
(?)
陸は気づく。
陽菜がある勘違いをしていることに。
「ちょっとまて。別れるってどういう意味だ?」
「え……? あの子陸くんの彼女じゃ……?」
陽菜が泣き止む。
「違ぇよ。あんなチビ自己中女彼女にした覚えはこれっぽっちもない。というか和佐くらい心の広い人間じゃないと不可能だ」
陸は言い切る。
(いや、事実だしいいんだよな)
少し罪悪感を残して。
陽菜は急に恥ずかしくなった。
暗かったのが幸運でもし鏡を見たとしたら真っ赤になった顔が写る事だろう。
「ご、ごめんなさい。いろいろ勘違いしちゃって……」
そんな陽菜に陸は返す。
「いや、人間だし間違う事があるのはあたりまえだから謝んなくていいよ」
そして、陽菜の頭を撫でる。
「……ありがとう」
陽菜は陸の胸に潜る。
(んえあ!? ちょ、これって……!?)
陸の理性が怪しくなる。
(い、いいんだよな……? 最初に来たのは陽菜なんだし……。べ、別に嫌らしい意味とかじゃなくてだな……これは)
陸は自問自答し、言い訳までつけて、実行する。
ぎゅ……っ
陸はそっと陽菜を抱いた。
温かくて、柔らかかった。
陽菜の方も別に嫌がったりはしていないようだ。
「陽菜……っ」
その時。
バンっ
荒々しい音と共にあの子・姫の声が通る。
「ちょっと、陸っ。返事くらいしなさいよっ!!」
「あの馬鹿ドアぶっ壊しやがったな……」
陸はあきらめかけたように言う。
もちろん姫には聞こえない。
「留守なんじゃないですか?」
何年ぶりかの変わっていない男の子の声もする。
「もう逃げたってこともありますよ?」
この声は和佐だ。
「むーっ、許せない!! 私を放っといて他の女の子となんて……っ!!」
嫉妬の炎がさらに燃え上がる。
「もう、怒ったもんっ!! 明日人前でパパって呼んでやるんだからっ!!」
そう言い残すと陽菜は出て行った。
それに着いて行く十夜の足音。
それから二分後。
もう誰の気配もなくなった。
居るのは自分と陽菜だけのはずだ。
陸は収納場の扉を開ける。
「ふぅーーっ」
陸は深呼吸する。
「あれ? こんな狭い所に隠れてたんですか? ごめんなさい、全く気づきませんでした」
ビクッと驚く二人。
そこには声の主・和佐が座っていた。
「初めまして。月見里和佐といいます。よろしく」
「ぇと……は、はじめましてっ。……えっと、その……す、鈴風陽菜ですっ。こ……こちらこそ、よろしくです」
緊張してしまって言葉がとぎれとぎれになってしまう。
和佐はそこは気にせず微笑み、真っ赤になってる陸を横目に言う。
「そ、れ、で、プレイボーイ陸くんになにかされましたかー?」
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