第二十八話
陽菜は無意識に陸の袖をつかんでいた。
それに気づき、陽菜は焦る。
「ぇ……? あ、ご、ごめんね」
陽菜は手を離す。
その手が、わずかに震えていることに陸は気づいた。
暗闇に一人知らない所に入る恐れ、怖さ。
たった一人の女の子をこんな所にたった二分だと言っても閉じ込めるなんて。
陸はとんでもないほどの罪悪感を感じた。
「怖いん……だよな?」
そんなことは一番自分が知ってるはずなのに。
かつて地下牢に鎖つきで閉じ込められた自分ならわかっているはずなのに。
陽菜は正直に頷いた。
「ちょっと狭いけど、我慢してくれよ?」
陸はまず陽菜を収納場へ寝かせる。
やはりというか、狭い。
もともと人が入る事なんてもちろん考えないで作っているのでなおさらだ。
とは言え、どう見ても日本の女性の身長平均よりはるかに小さい(姫は例外にして)陽菜がすっぽり入る大きさだ。
一応手や足は自由に動かせるほどは余裕があるのだが。
陸は少し考える。
が、やはりこれよりいい考えが浮かばない。
というか、プレッシャーのように姫の殺気が近づいて来てるので焦って思考が停止してしまってる。
陸はしょうがない、と自分に言い聞かせて陽菜の居る収納場へ入る。
「ぇ……!?」
一人でここに取り残されると思っていた陽菜はもちろん驚く。
「閉めるからなー」
照れ隠しのためか軽く言う陸。
一応防音と気配は隠せるはずなので喋っていても別に漏れる心配はない。
(というかこの体勢は……!?)
狭いところに無理矢理入ったのでやはり空間の余裕が無い。
(ちょ、胸んとこになんかやーらかい物が)
つまり、密着しざるえない体勢だ。
でも、やはり動けない。
(つまり……この体勢のまま二分隠れてろと?)
幸か不幸かわからない、天国地獄サトンデスを二分間。
陸は自分がどこまで正気でいられるか見当がつかなくなった。
(あの子、誰なんだろう……?)
陽菜はこんな状態になっていてもそのことだけがとにかく気になった。
否、不安だった。
陸はどうしてもあの電話で話していた子と自分を会わせたくないらしい。
考えたくもない考えが陽菜の頭の中を占める。
(彼女、なのかな……)
電話から聞こえて来たのは怒鳴り声。
つまり、あの子は今怒っている。
(浮気……だと思ったのかな)
嫌な単語がどんどん頭の中を巡る。
(嫌……っ)
もう、泣きそうだった。
(私のせいで、陸くんに迷惑かけちゃった……)
ただ、それだけが悲しかった。
それはあの子が陸の彼女の可能性があるからではない。
初めてできた大切な人が自分のせいで不幸になってしまうことが悲しかった。
やがて、その感情が涙となって溢れ出す。
「……ふぇっく……ご……ごめんなさ……」
ぽろぽろと雫が顔をつたる。
「!? ど、どした!? どっか痛いか!?」
陸は泣く陽菜に焦り、声をかける。
「私のせいで……こんな……ごめんなさい……っ」
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