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第六章 風邪……?
第二百七十五話
 世の中には不幸体質と言う物が本当にあるんじゃないか、と彼は思った。
 そしてそれは自分の身に取り付いてるのではないか、と。

「甲斐ーっ!! とっととついてくるのさー」

「へいへい」

 白鸚の校舎……と言う名のどでかい高層ビルで、そう甲斐は現在進行形で思っていた。
 なぜそう思うかと言えば、淡紅侵入組が自分とミザリーに決定してしまったからである。
 甲斐ははーっと重いため息をつき、先ほどの納得できない出来事を思い出した。



「はぁ!? 何で俺!?」

 侵入組がミザリー一人では危なっかしいとの事でその付き添いとして甲斐が指名された。
 もちろん甲斐としては暗がりとは言え、顔を見られているので絶対に行きたくない。
 そんな彼の心情を悟ったのか自称作戦隊長であるユリウスが言う。

「ガキの面倒はガキが見るのが当然だ。それにロリショタ主義の淡紅では貴様の様なヤツの方が浮かなくて済むだろう」

(うわ、ずりぃ!! 自分がオッサンなのをいい事に逃れやがって!!)
 そう思いながらも、う……っとつまる呪術師。
 外見が幼いのは否定できないからだ。
 ぶーっとっ膨れ、隣に居るアルドーを睨むと、彼は困った様な顔をする。

「顔が割れてるって言いたいんだね。しかしね、調べてみた所キミと殺りあった子、淡紅ではその存在を公開してないみたいなんだ」

「公開してない?」

 思わず甲斐は聞き返す。
 あんな強力な人材が使われずに放置されてるなんて普通は有り得ない。
 答えたのはユリウスだった。

「理由は不明だが少なくても淡紅が今までやらかして来た戦争や抗争に一度も名前や存在が出ていない。つまり意図的に隠されているか、そうかあの時妹の気配を辿って外部から淡紅に侵入したのか」

 甲斐は即答する。

「後者は有り得ない。そんな危険人物が事前に入り込んでたとしたら外部への警戒レベルも上がっていたはず。そんなんだっだら俺らだってあんなにあっさり侵入できなかったんじゃないか?」

 アルドーは言う。

「まぁね、でも淡紅のデーターベースにもそんな名前ないんだよ。考えられるのは先輩が言った前者……誰かが意図的に隠してるってのが一番確率は高いだろうね。うちの教授みたいにさ」

 三人は揃ってこの部屋の中心にある水槽の様な形状のもの……バイオ機器の中で目を閉じていた者に目をやる。
 普通ならもうとっくに死んでいるはずの人物を無理矢理細胞培養させて生かしている。
 口が裂けても白鸚リーダーには死んでも言えない、彼らのトップシークレットである。
 重くなった空気を振り払う様にアルドーは続けた。

「まぁどちらにしても彼女が坊や(甲斐)の事をチクったりはできないから安心していいんじゃない? それに変装だってしてただろう?」

「変装つってもカラコン入れてヒールで無理矢理背伸ばしただけだけどな」

「けどあんな暗がりじゃ他に誰かが目撃してても気づかないよ」

(他の誰か……)
 甲斐はあの天使の姿を思い出し、口を押さえる。
 あんなにグロテスクな物を見たのは、自分に一生残るだろうトラウマを産みつけたミザリーの殺した人の残骸を見て以来である。
 もともとそう言う類いの物が苦手な甲斐としてはそんな女が居る淡紅なんかには行きたくないし、しかもミザリーと組むなんてごめんだ。 

「でも……だったらアルドーでいいじゃんか」

 アルドーは自分をいろいろな姿に変える能力を持っている。
 自分と同じくらいの少年に姿を変える事は朝飯前のはずだった。

「そこなんだけど、私はあまり戦闘が得意ではないんだ。もし何かがあった時のことを考えるとやっぱりキミが一番適してるんだよ」

「……」

 そう言われると言い返す言葉がない。
 しかしここで何も言わないのは少し癪なので嫌みとまではいかないがささやかな反抗をすることにした。

「そういえば、最近流行ってる鳥原くるみって淡紅所属なんだってさ」

「!!!!!????? か、かかかかかか甲斐くん、そういう期待を持たす様な冗談やめないか!?」

 口調の割に頬がにやけているアルドー。
 彼は鳥原くるみの大ファンだった。

「ま、データーベースにも載ってないただの噂だけどさ。白鸚(うち)の生徒の誰かが淡紅の奴とつるんでるの見たんだと。だからもしかしたら学祭に来るかもよ?」

「な……っ!! それは生くるみちゃんに会えるって事かい!?」

「どーだかねー、もしかしたら握手とかしてもらえたりして……」

 かく言う甲斐もアルドーまでいかないが、一応彼女のファンである。
 そうやってアルドーを揺さぶっているとユリウスが口を挟んだ。

「おい、さりげなく自分に回って来た仕事をアルドーに押し付けるんじゃない」

「チッ、バレたか」

「ぇえええええええ!? 今のやっぱ嘘!?」

 手を必死に洗っていたアルドーが悲鳴をあげる。
 甲斐はもう諦めるしかないと踏んで、片手を挙げて、出て行き様にこう言った。

「鳥原くるみのサインが貰えても俺とアルドーの分しか貰ってやんないからな」

 ガチャン

 扉が閉まる音がやけに大きく響く。
 静まり返った中ユリウスの死にそうな声が静かに響いた。

「し、失敗した……もっと優しく言うんだった……」

 そう、ここに居る彼も隠れファンの一人だった。
アイドルオタクの巣"暗黒の研究室"をよろしくお願いします。

あとこちらにミザリーのイラストを載せちゃいました↓

http://359.mitemin.net/i10108/

イメージと違ったらごめんなさい。
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