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第二十六話

陸は気づいていなかった。
この、楽しい時間があと数分後に危機的状況に変わってしまうと言う事を。


「十夜くん……なんだかニンニク臭くなーい??」

姫は不満を漏らす。
ここはデパート八階のファーストフード店。
三人とも朝食中である。
「ああ、これですか。陸ちゃんイジメにいこうと思ったんですけど逃げられました」
キッパリと酷い事を言う十夜。
こういうところは何年経っても変わらない。
「陸ちゃんイジメるのは別にいいんだけど、今朝食中だよ?」
姫もやっぱり悪魔(しかも純血腫)なので気分が悪くなる。
しかも、陸より拒否反応が強い。
一族全てが悪魔(姫はその末裔)だと言う事もあってニンニクとはかなり相性が悪い。
「僕もあまりニンニクのニオイは好きではありませんね」
和佐も同意する。
彼は姫と一緒に暮らし、育っているせいもあってニンニクは食べつけていない。

「ごめんなさい。今お手洗い行ってニオイ消して来ますね」

さすがに二対一はキツかったらしい。
十夜は洗面所に向かった。


それから数分後、十夜は戻って来た。
姫はさっきから気にかけていたことを言う。

「逃げられたって、どうして?」

見つけた獲物は捕り逃がさないことで有名な十夜にしてはめずらしいミスだった。
外見こそ小学校低学年か中学年くらいだが彼は世界で名の通る幻術師である。
よって、陸よりはもちろん生きている年も長い。

十夜は人間と悪魔の間の子である。
なのでニンニク、十字架等に拒否反応を起こす事もない。
だが、特性は悪魔をトレースした様なものである。

悪魔は一般的に年を取らない。
否、取る事は取るのだが通常の人間にとっての一年が悪魔ではたったの一日でしかない。
まあ、取ろうと思えば成長術など使えば簡単に取れるのだけれど。
普通その悪魔個人が自分に一番合った年齢、大きさの体型を選び、使う。
(ちなみに精神年齢も体格そのままである)
結果、年齢と年期はまったく異なったものになる。

「……気配を完璧に消されました。あれじゃあ僕でも無理ですよ」

おそらくフルパワーで消したのだろう、と十夜は付け足す。
このハイエナのような十夜に見つからないくらいまで消すにはやはりそれなりの力を使わなければならない。
「それは残念でしたね」
昨日のこともあるのでできるだけ話題を変えたいと思い、言う和佐。
だがその願いは儚く壊される。
目の前にいる少年に、一瞬で。

「そういえば……誰かと一緒にいましたね」

十夜が言うと同時に和佐は隣から猛烈な嫉妬の炎が燃え上がったのを感じた。

「それって女の子じゃなかった?」

挑戦的に姫は聞く。
和佐は冷や汗がたらたら落ちてくる感触に気づいた。
(ま、まずい……っ!!)

「そ、それって園児とか幼女とかそういうのじゃないですか。たぶんですけど」

こういう状況に弱い自分が許せない。
(っていうか幼女ってなんですか、僕のアホ……)
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