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更新遅れたのでいつもの二倍です*
第六章 風邪……?
第二百五十二話
 あの鳥は眠ったのではない、死んだのだ。
 自分の手によって……。

 ただその事実が悲しくて、そして自分の力が恐くて陽菜は逃げ出した。
(鳥さん、私のせいで死んじゃった……っ)
 もちろん陽菜は鳥が死ぬことなんて望んでも無い。
 ただ眠ってもらいたいと願っただけだ。
 しかしそれに答えた自分の力は鳥を永眠させた。
 トイレに逃げ込もうとしてその数メートル前で羽織っているバスローブの様なもので躓き、こてんと転ぶ。

「う……っ」

 自分は普通の人間だ。
 陸たちの様に超能力(と陽菜は思っている)なんて持って無いただの人間なのだ。
 陽菜はぼろぼろ涙を零しながら立ち上がり、トイレに入った。

「ひ……っ」

 陽菜は正面の大鏡を見て目を見開き声を失う。
(何……コレ……?!)
 鏡に映ったのが自分だと気づくまで数秒かかった。
 紫の瞳、陸よりも明るいのでは? と思うくらいの明るい色の髪の毛、確か背中くらいの長さだったはずが腰までに伸びた長いウエーブがかった髪。
 そして……背中に生えている大きな翼。
 その全てが元の自分とは差がありすぎて鏡に釘付けになる。
(……化物、みたいにはなってないかも……)
 むしろ羽さえ畳めば前より少し可愛くなった気がする。
 そんな陸たちの影響で養われたポジティブ精神で自分を励ましていたその時。

「ひゃ……っ」

 いきなり背後の扉が蹴破られ陽菜にぶつかり見事に吹っ飛ぶ。
(誰……?)
 よろける陽菜に手を差し伸べ立たせてくれているその人物を見て陽菜は驚く。

「まりもちゃん……?」

 そこには陽菜以上に驚いていたまりもが居た。
 彼女はものすごい不機嫌そうに眉を寄せて鼻をすする。

「……なんであんたがここに居るのよ、安静にしてないと駄目じゃないの?」

 言葉のわりに目が充血していたりと明らかに泣いていた痕跡があるためあまり迫力が無い。
(どうしたのかな……?)
 もう泣き止んだ陽菜はきょとんとして聞く。

「泣いてたの……?」

 まりもは図星を突かれてカッとなる。

「泣いてない泣いてない、泣いてないったら泣いてないの!! 別にあのクソ無表情冷徹海斗にムカついてるだけで泣いてないんだから!!」

 結局海斗に酷い事を言われたという事実は隠しきれてない。
 陽菜はそんなまりもをじぃーっと見る。

「何よ? 私の顔になんかついてる訳? ふん、私の真似して髪にブリーチかけったって無駄よ。所詮新入りなんぞに私の隊長を譲る訳ないもの……ってちょっとあんた!! 何笑ってんの!?」

「だって、前会った時と雰囲気違うから……ぷくく……」

(何よ、この子……ずるい)
 こんな子大嫌いなはずなのに、なぜか憎めない感じがする。
 このトイレは当たり前だが女子トイレなので男子は立ち入り不可だ。
 まぁ男と女の中間みたいな謎の生物(甘○氏や○月氏等)はどうなのか知らないが。

「だって隊長にこんな醜い姿見られる訳にいかないでしょ?! 隊長の好みは……悔しいけどあんたみたいなのなんだから……」

 そんな空間でもこんな愛想の悪い自分に嫌な顔一つしないで笑っている陽菜はなかなかの奴だとまりもは思った。
 陽菜はいきなり寂しそうになって言う。

「うん……でも、もう嫌われちゃうかもしれない……」

「は?」

 陽菜は自分を抱きしめて言う。

「私ね、もう人間じゃなくなっちゃった……こんなのも生えちゃったし、気持ち悪いよね……」

 陽菜の姿は漫画や神話に出てくる様な奇麗な羽ではなかった。
 体に対して大き過ぎる不格好な羽。
 しかも生え方が生々しい。
 そんな初心な言葉にまりもは飽きれてため息をつく。

「あんた……隊長がそんなちっちゃなことで人を嫌いになるとかマジで思ってる訳? だから素人って嫌。そんな奴なんかだったらあたしらが従う訳ないじゃん。っていうかあたしそれ今気づいたんだけど」

 まりもの言葉にぷっと笑いつつも励まされる。
 彼女の言葉にはなぜか自分には無い強さがあった。
(まりもちゃん ……)
 まりもはさらにだめ押しを言う。

「それに……前隊長がテレビの長い髪の女の子見てかわいいって言い出して翌日大金払って八十本もエクステつけてきたのに見事にスルーされたのよ? しかも極めつけは"あれ? まりもなんかいつもと違ってもっさりしてない?"。あれはいくら隊長でもイラッときた」

 陸だったら有り得ると思い陽菜は爆笑する。
 そういえば陽菜もこの前可愛い髪飾りをしてデートしたのに全く気づいてもらえなかったことが会った。
 まりもはしゃべりだすと止まらない性格なのか、楽しそうに話す。

「隊長のニブさとデリカシーの無さはもうナマズレベルよ。神城が付け睫毛付けて来たときも"目が毛深い"とか言ってたし、海斗がロンゲで赤髪にしても"なんかいつもと違う"くらいしか気づかないんだから!!」

 恐るべき鈍さをもつ陸に陽菜はもう笑いすぎて立てなくなっていた。
 まりもの方も海斗の事なんか忘れて笑っていた。
(ほんと、この子には勝てないな……)
 まりもはこれ以上話すと本当に止まらなくなりそうなので最後に陽菜にアドバイスする。

「あのね、あたしはまだ隊長のこと好きだからあんまり詳しい事言わないけどあの人に嫌われたくないなら覚えとくといいわ、絶対サイクリングに誘っちゃ駄目。絶対よ」

「なんで?」

 数時間で打ち解けてしまった陽菜はすかさず聞き返す。

「これあたしが言ったってこと極秘だから。いい 隊長はね、ああ見えてもピュアなの。一度傷ついたら一時間くらい泣き止まないほど純粋なハートの持ち主なの」

 陽菜は頭の上にはてなマークを浮かべる。
(なんでそれがサイクリングに言っちゃ駄目なんだろう……)
 そんな彼女をよそにまりもはこくんと唾を飲んで言う。

「だから、あの人は絶対あんたに補助輪無しじゃ自転車乗れないことバレたくない、いや、バレたら死んじゃうと思うのよね」

 陽菜は一瞬頭が真っ白になる。
(あの年で補助輪? あんなに運動神経抜群でちょっとかっこつけの陸くんが?)
 一瞬サイクリングロードでよろよろしながら走る涙目の陸を想像して今度こそ起き上がれなくなるくらい陽菜は爆笑した。
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