「……っ」
肩から生臭い液体が飛び散る。
痛くはないもののなにか不快な感覚……麻酔をしたまま体を抉られている様な感覚が湧く。
陸人はそのまま体を起こして荒い息を吐いた。
(こいつ……)
今目の前に居る人物が実体かどうか信じがたいほど異常な強さだった。
相手の攻撃が強い訳ではない。
攻撃が、当たらないのだった。
得意の雷撃も、召喚した幻覚の魔物も奴には当たらず全部すり抜けてしまうのだ。
結果数十分経った今も相手は全く無傷であり、攻撃する自分の方が体力を使い果たしてしまっていた。
(チッ……強行突破するか……っ)
奴の能力は自分を中心とした半径重力を自在に操ること。
つまり奴のテリトリーに入った瞬間重力でぺしゃんこになってしまうと言う事だ。
しかしこのままでは埒があかない。
陸人は今使える中で最も強力な防御結界を自分の周りに張り、
「はぁあああっ」
声を張り上げ、そのまま的に突っ込んだ。
これには奴も驚いたのか目を見張る。
「なんだ、やろうと思えばできるんじゃないか。つくづく私は勿体ないことをしてしまったな」
しかし、皮肉にもその痣家笑う様な表情と余裕は壊せなかった。
鉈は奴の右腕で止められた。
(っこの……)
余った力を込める。
「く……っ」
「……!?」
ビシャ……ッ
深緑の生温い液体が飛び散る。
陸人の電撃の籠った鉈が奴の右腕を吹っ飛ばした。
「貴様……っ」
「が……っ」
奴はもう片方の腕で陸人を振り払った。
力を使い果たした彼はそのまま横たわった。
(くそ……体が動かな……!?)
体を一瞬で麻痺させるような刺激臭に陸人は鼻を覆う。
(くっせぇ!! 阿呆陸、helpだ!! 俺様この臭いに堪えられる自信ないんだけど!!)
陸は聞いてるのか聞いてないのか振り向いてくれない。
(無視かよ……)
陸人は舌打ちして動かない体を無理矢理起こすと奴を睨む。
「お前……死んだ体を無理矢理復活させやがったな」
この臭いは間違いなく腐敗した血の臭いだった。
奴は眉間にしわを寄せそれでも笑ったまま言う。
「そうだ。しかしそれが解ったからと言ってお前になんのメリットが……」
「つまり能力は変わってないが体はもうボロボロって訳だ。てめぇが避けられるのは間接的な攻撃のみだってことはもう解ってんだよ」
陸人は陸があまり愛用していない短剣を電気を込めて奴に投げる。
電気を帯びた短剣は弾丸の様な速度で飛んでいき奴の足を切断した。
彼はバランスを失いそのまま地に倒れ込む。
「まぁいい……今回はお前を連れて帰る事が目的ではないのだ……」
「は……?」
「あいつはこっちに連れてくるべきだったな……」
「何をほざいて……」
気づいたときには遅かった。
(やべ、逃げられる……っ)
陸人はとっさに手に持っていた鉈を投げるがもう彼の姿はなかった。
「くそ、ふざけんなよ……」
立ち上がる体力すら失われた陸人はそのまま倒れ込み、意識を失った。
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