第二十三話
「ちょっとそこの椅子に座ってて。今朝食の支度するから」
陸は陽菜を座らせて、キッチンに行く。
(まだ、胸がドキドキいってるよ……)
初めて入った男の子の家。
そのリビングは白とライトブラウンを基調とした清楚で落ち着いたカラーだった。
外の気温より五度くらい高い室温は陽菜を安心させるには十分だった。
数秒たってある異常なことに気づく。
(あれ……?)
陽菜の足元、リビングの角、壁、全てにホコリやキズ、汚れなどが全くなかった。
髪の毛一本すら落ちていない。
はっきりいってこれは綺麗を通り越して不気味だった。
それに……。
(どうやってここに来たんだっけ?)
門までたどり着いたとこまでは覚えている。
陸も一緒だった。
走って、おぶってもらったことも覚えている。
陽菜はここに来た時最初に言われた言葉を思い出した。
『普通のヤツは、気持ち悪いとか怖いとか……言うから』
このことだったんだ、と陽菜はようやくわかった。
解ると同時に不安が溶けてなくなっていく。
陽菜がそんなことを思っている頃。
極小わがまま少女・姫の姿は淡紅外のショッピングモール最上階のゲームセンターにあった。
「ひゃー、あのぬいぐるみかわいいっ!!」
もちろん隣にはホスト面の和佐もいる。
姫の指を指すその先には……。
(あ、あれは……!?)
かわいいぬいぐるみの詰まったUFOキャッチャーだった。
(……ど、どうしましょうか……)
念力使い・和佐は人生最大の危機に追いつめられた。
となりにはいかにも期待してます的な笑顔を向ける姫。
和佐はUFOキャッチャーの中にあるかわいらしいうさぎのぬいぐるみを睨みつける。
彼はこういうゲーム(とくにUFOキャッチャー)が嫌いだ。
否、不得意だ。
彼がまだ幼い時、はじめてこれをやった。
けれどなかなかとれなくて、意地を張って四時間粘った。
結局二万円近く使ったのに一個も取れなかったので、あわれに思った陸に一つ取ってもらった。
あんな恥ずかしい思いは二度としたくない。
和佐にはある意味トラウマになっていたのかもしれない。
(でもここで辞退したらムードが台無しになる……)
一つ手段があった。
バレたらすごく情けない手段が。
念力を使ってUFOキャッチャーの中身を取り出すという手段が。
和佐の力・念力は指から二メートル近くかつ七十キログラム以下のものなら手で触れなくても自由自在に浮遊、移動、転移させることができる。
したがってUFOキャッチャーの中身を落とすぐらい簡単な事である。
が、しかし。
もし隣にいる姫に気づかれたら。
「和佐くん、大丈夫? 冷や汗垂れて来てるよ?」
姫の一言で我に返る。
(気づかれた……?)
少し焦る和佐。
UFOキャッチャーがトラウマなんて絶対知られたくない。
「ごめんね。あそこにベンチあるから少し休んでた方がいいよ」
姫は心配そうに和佐をベンチに促す。
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