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第六章 風邪……?
第二百二十二話
「どうした? 俺の顔になんかついてるか?」

「そ、そうじゃなくて……つかさちゃんそっくりだなぁと……」

照れながら言う陽菜に鏡は?マークを頭に浮かべ、まぁ深入りはしないことにした。
なにせ世界最強と謳われる我が淡紅学園情報部に勤める妹の情報に『しつこい男は嫌われる』と示されていたので深入りするわけにはいかなかった。
鏡ははっと思い出し陽菜の隣をウザいほどキープしているはずの宿敵の姿を探す。

「甘利は? 一緒じゃないのか?」

そう聞くと陽菜は一気にしゅんとなってか細い声で言う。

「待ち合わせ時間……とっくに過ぎてるのに……来てくれないの……」

(は? あの甘利が?)
鏡は思いっきり怪訝な顔をする。
彼の知ってる甘利 陸と言う人物はいつもはへらへらしてるくせに仕事とか待ち合わせには一回も遅れた事がない……というより絶対時間より十分は早く来ている種の人物だ。
待ち合わせて……しかも好きな人と、なのにそれを忘れてどっかほっつき歩いてる様な人物では少なくともない。

「なぁ……何分遅れてるんだ?」

「もうすぐで三十分くらい……電話も繋がらなくて……」

(何があったって言うんだ……あいつは)
鏡は頭を掻きむしってタバコをくわえポケットから出したライターで乱暴に着火する。
(また……ボロボロになって帰ってきやがるな……)
以前陸が行方不明になった時があった。
この街に住んでいるみんなで探しまくったのだが結局見つからなく……三日後に死にそうな状態で帰って来た。
その時、彼の手術やらなんやらに協力したのが鏡だった。
医療部の仕事だからと言うのもあるが、いくら陸が嫌いでも別に死んでいいという訳ではないからだ。
治癒能力に特化した悪魔じゃなかったら……もし自分と同じ種の死神やその他の部類の生物だったら絶対助からないくらい酷い怪我だった。
しかし……そんな外見の傷なんかよりも深刻な状態にあったのは精神の問題だった。
体の状態は悪魔の治癒能力と鏡の技術ですぐに改善されたのだが、何者かに怯え精神がコントロールできなくなったり、さらには口にしたものをすべて吐くという最悪の事態になった。
いったい彼になにがあったのか。
それは自分だけではなく親友のはずの和佐たちにも何があったのか一切口にしなかった。
まぁだいたい見当はつくのだが。
鏡ははぁーっとため息をついてタバコの煙を同時に吐き出すと陽菜の腕を掴む。

「まぁ気にしなくていい、あいつが来るまで付き合ってやるよ」

「陸くんは……無事なの……?」

今にも泣き出しそうな顔で訴える陽菜をできるだけ視界に入れない様にする。
どうやらこの少女を振り向かせるには高度なテクニックを使っても困難だろう。
しかし、そこでくじけては男が廃るので本日一番の笑みを浮かべて言う。

「大丈夫だ、あいつはあれでも結構しぶといからな、それに馬鹿は死なないって言うし」

「それ言うなら『馬鹿は風邪引かない』だよね?」

陽菜はぷっと笑ってしまう。
(そうだよね、陸くんは絶対大丈夫だもん)
それにこんな所で何時間も待っていても逆に陸に罪悪感を与えてしまうだけなのでまだ鏡と回ってた方がいいと思った。
たから、掴まれた手を握る事なく陽菜は言う。

「どこ回る」

「射的。祭りに来たら絶対やっとかないとな」

鏡も掴んだ手を離して愛しい彼女に言う。
それは『恋人未満』の礼儀でもあり、まだ自分が彼女の中ではあまり重要な人物に達していない事を示している。
(見てろよ甘利、今日のこのビッグチャンスで逆転してやるぜっ)
鏡は心の中で長年の宿敵に宣言した。
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