第一章 陸と陽菜(第一話)
春が近づいて来た。
足下にはたんぽぽが。
心地の良い暖かい風が。
景観のそのすべてが春を表している、そんな季節だった。
学校では終業式やら卒業式をしている所が多いだろう。
そう、全ての始まりである春。
草花のかすかな匂いがするこの公園。
たくさんの子供たちが遊んでいる。
ここに、一人の少年が居た。
甘利陸十五歳。
十五歳と言う年齢にしては線が細いため、黄みがかったかなり明るい栗色の髪の毛、首やら耳やらについているアクセサリーという格好をしていても不良には見えない、そんな少年・陸。
彼は学校帰りコンビニで買った棒アイスを食べながら公園のベンチに座っていた。
正確に言えば寝転がっていたと言った方が正しいかもしれない。
(……眠い……。そういえば、ここ3日寝てないんだっけ。そりゃ眠いはずだ)
女の子の様なクリクリした目を閉じた。
瞬間、全てが解放されような心地が良い感覚になる。
そうしていつのまにか陸は寝ていたらしい。
陸の居る公園の一角。
いかにも不良と言う雰囲気をまとった男たちに絡まれている女の子がいた。
鈴風陽菜十三歳。
身長は平均並みだが容姿のせいか十三歳よりは絶対年上に見える少女。
セーラー服を着ていなければ高校生に見えるだろう。
「放して……っ」
陽菜はか細い声で言った。
腕をつかまれているという状況で言えると言ったらこの程度。
最も陽菜はこの辺の、日本でも有名な若者たちのギャングがそんなことで引き下がらないことぐらい了承済みだ。
「ああ、放してやるよ。財布をよこせばな」
対してこちらの不良たちはさもおもしろそうにニヤニヤしながらこっちを向いている。
「お前のうち、裕福なんだろ? だったら少しくらいいいじゃねぇか。それともなにか? 財布もってねぇとか? じゃあ、体で払ってもらうしかないよなぁ」
その中の一人がこの世で一番いやらしいといっても過言ではない顔で言った。
と言うかどこまでベタなんだこいつら。
「……っ」
陽菜は財布を持っていなかった。
否、持ってはいたが中身が空だった。
陽菜の表情は恐怖に彩られていった。
「いいねぇいいねぇ、あんた若いしそっちのほうがやりがいがあると言うかっ」
陽菜は最後の賭けとして……鞄にかけてあった防犯ブザーを引っ張った。
ピヨヨヨ……
周りにうるさいほどの音が響き渡った。
「このガキ……っ!! なめやがって!!」
不良の一人がそう言ってつかんでいた腕を地面に向かって投げつけた。
「――……っ」
あまりの痛さに涙ぐむ陽菜。
もう、周りに人が集まってきていた。
しかし彼らは止まらないし、助けてくれる人もいない。
「オラッ、さっさと歩け……ぁ?」
そして、向こうからとんでもない殺気の塊が接近している事に一同はやっと気づいた。
不良たちも話す事すら許されない殺気に絶句した。
異様だった。
ただ歩いて来ているだけなのに、ただそれだけなのに。
周りにいっさい混ざらない、混ざる事のできない異様な雰囲気が少年を纏っていた。
「あ……」
陽菜はその少年を知っていた。
以前、夕方、駅前でギターを引き歌っていた少年だ。
少年・陸は恐怖で固まっている不良たちに言った。
「おまえら、レアだよ。たかがただの凡人の分際で俺をここまで怒らせる事ができるなんて」
陸は、自分でもわかるくらい満面の冷たい笑みを浮かべていた。
心無しかこめかみら辺がビキビキいっている。
「な、何言ってんだ、こいつ……」
不良の一人がやっとの思いで口を開く。
でも声が明らかに震えている。
「ばっ馬鹿!! こいつ……甘利財閥の……っ……淡紅の……っ」
また一人口を開いた。
信じたくない事実が、不良たちの脳内を襲う。
甘利財閥?淡紅!?
最悪、だった。
「淡紅」。
誰もが知っていて誰もが恐れるある土地。
この日本にあって、しかし天皇であってもその地に踏み入る事のできない街。
凡人が入ろうとしても街が拒めば入れない、そんな街。
信じられないかもしれないが、それが現実だった。
その不気味な街のボスが甘利財閥である。
ちなみにその財閥はいい噂どころか、悪い噂の方が限りなく多い若干オカルト気味な組織だった。
例えば、臓器売買をして儲けているとか。
人外が絡んでいるとか。
中でもその一人息子がとんでもないヤツで、敵に回すと一番最悪だと聞いた事があった。
不良なんてものじゃない、彼に喧嘩を売ると言う事は命を売っていることと同じなのだ。
毎日ワンクリック 長編小説ランキング
†ラブファンタジー†
祝80万PV突破キャラ人気投票(〜10/15)
みりんイラスト館
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。