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第五章 学校
第百七十八話
陸はセリヌンティウスを助けるため走るメロス並みに走った。
玄関でまりもに声をかけられる。

「あ、隊長そういえば……」

が、陸はもうゴールしか見えてないので適当に返事をし、立ち去る。

「ごめん、また今度な」

逸早くこのアルバムを陽菜に渡さなければいけない気がしたのだ。
ぽつんと取り残されたまりもは唇を軽く噛み、独り言を言う。

「隊長、そんなにあの子がいいんですか……?」

悔しかった。
(なんで、あんな弱そうな子が……)
まりもは陽菜が陸の彼女だという事を知らない。



まりもから少し離れた同じ空間に海斗が居た。
(うわ、神崎怖っ)
パートナーの周りに黒いオーラが放出してることに気づく。
(まぁ、無理もないか)
まりもはずっと前から陸の事が好きだった。
たぶんそれを知らないのは陸本人だけだと思うくらいに。
海斗もまた無理矢理陽菜を受け入れた訳だが少し納得いかない事があった。
(あんなに恋愛うんぬんに無縁な人がどうしてあんなただの女の子に夢中になったんだ?)



「陽菜っ!!」

玄関のドアを蹴り上げて陸は家に入る。
バキィッと音がしてドアが崩壊寸前だが別にいつものことなので軽く無視する。
とはいえ土足はまずいので一応靴を脱ぎ捨て、陽菜を探す。
予想外にも陽菜はキッチンの方からでてきた。

「おかえり、どこ行って来……」

「これ、預かった、お前ので合ってるよな?」

ぜぇぜぇハァハァな状態で陸は紙袋を陽菜に渡す。
陽菜はよくわからないまま紙袋を受け取り中の数冊のノートを取り出す。

「これ……」

見覚えが合った。
しかし、陽菜の母親が納戸の一番奥にひもで縛り付けて隠していたのをたまたま陽菜が見つけたので、中身はまだ見ていない。
というか、見ようとも思わなかった。
鈴風家の納戸はほとんどゴミ貯めの部屋で、その中でいつまで経っても捨てられてないノートの束はかなり不自然で気味が悪かった。
陽菜はそれとなくぺらっと本を開く。

「――――っ」

陸にでも陽菜がどれだけ動揺しか解った。
立っていた陽菜が崩れ落ちる。

「っと」

慌てて陸は支えるが陽菜は震えているまま動かない。
(…………?)
なんと声をかけていいのか迷う。
(嬉しい、のかな……それとも……懐かしさ? 感動?)
不運にも陸の予想は外れていた。

「な……んで……これが……」

陸は顔をくしゃくしゃにして泣く陽菜を見て絶句する。
陽菜の顔は陸の想像していた感動、嬉しさの様なプラスの思考ではなく明らかに悲しみだったからだ。
(……っ!! なんで最初に気づかなかったんだ!!)
残るのは後悔と自己嫌悪。
保存状態の悪さがアルバムの表面から読み取れる。

中身を見て驚いた陸は、アルバムの表面の異常な数の傷跡、明らかに意図的なはさみの切り込みを見落としていた。
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