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第五章 学校
第百六十八話
十夜はその陰に思い切って空中から蹴りを入れた。
予想通りその陰は後方へ飛び上がりギリギリ蹴りを交わした。
(が、これはよけられないな)
幻覚で作り出した何千本もの針を陰めがけて一直線に突き刺さる。

「ぁあああああああああああああああっ」

陰はうすっらと人の顔を映し、ついには姿を表した。
それは十夜の予想を遥かに超える白衣を着た痩せ気味の青年だった。

「どちら様です?」



「ぅう……やっぱり陸くんうま過ぎだよ……」

カラオケの帰り際陽菜が唸る。
あのあと陽菜が興味本位で「採点」というのを押してしまった所、陸はやはりどの曲も九十五点くらいをキープしていた。
そして陽菜は……経験値の低さが身にしみたというか、最高でも八十七点までしかいかなかった。
まぁ最後にまさか陸が得意の(と本人は認めたくないらしい)ロリ声でアニソンを歌いだしたのはさすがに吹いたが。
ボーイズアルト、恐るべし。

「でも陽菜結構上手かったじゃん」

お世辞にしか聞こえない台詞に陽菜は付け足す。

「『初心者にしては』じゃなくて?」

「ははは、まぁ昔の俺の歌聞いたら絶対そう思うからな。あれはもはや歌じゃない」

そのあまりのいい様に陽菜は笑う。
そしてはっと気づいた顔になり切り出す。

「ごめん陽菜、俺ちょっとよりたいとこあるんだけど……付き合ってくれるか?」

「うん。でもどこ?」

「そこ」

陸が指差したのは目の前にある大きくて割と新しい商業施設だった。
自動ドアと明るい店内が陽菜たちを迎える。

「えっと一階の……あそこか」

陸の用事のある場所とは……意外にもただのドラックストアだった。
陽菜が不思議そうに聞く。

「何買うの?」

「ピアスの消毒液。昨日手入れしようと思ったら切れててさ」

(そういえば陸くんすごい穴空けてるよね)
髪で隠れてるためよく見えないが二つや三つではなさそうだ。
思い切って聞いてみる。

「陸くん、ピアスホールいくつあるの?」

その答えは陽菜も目を見張るほど驚いた。

「んーと……左四つ、右三つだよ」

ということは合計七つ。
知り合いにも七つもピアスホール空けてる人は居ないのでまじまじと見る。

「あ、空けるとき痛かったりしないの?」

「いや、あんまり……俺だからかもしんないけど。最初は和佐に進められて両耳に一個ずつ空けたんだけどなんかハマっちゃって一年おきに空けてたらいつのまにかこうなってた」

……うん、陸なら十分ありそうな話だ。
陽菜はまた知らない陸の過去を知って内心満足感に浸る。
(陸くんってやっぱり昔から可愛いとこあるんだ……)
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