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第十四話
夕食を食べ終わった二人は店を出た。

「レシート見せて」

陽菜は申し訳なさそうに言う。
「ほい」
陸はそれに気づいてないかの様に(実際気づいているのだが)渡す。
二入分の食事、合計金額一万三千円。
陽菜はあんまり注文しなかったが(陸はデザート等も注文していた)やはり落ち込んでしまう。
「ごちそうさまでした。えっと、なにかお礼しなくちゃ……」
「お礼? 何でもいいのか?」
陸は聞いてみる。
陽菜は決心して言う。
「うん」
相手が陸であったため言える言葉である。
もしこれがクラスの男子とか変な高校生とかだったらキス一回とか体貸してとか言い兼ねないからだ。
一緒に居た時間が短くても陸がそんなこと言うような人では無い事はだいたい分かっていた。
「んー……じゃあ……これから時間、あるか?」
チラっと陽菜を見て言う。
「うん、今日お母さん帰ってこないから……」
なにを言い出すか予想がつかないので陽菜は少し緊張してしまう。

「行きたいとこがあるんだけど、少しつきあってもらっていいか?」

「うん」


陽菜は少し慌てた。
若い子が行く様なカラオケ、ボーリング、映画等は一回も言った事がないからだ。
そんな様子の陽菜をまったく気にせず陸はデパートのエレベータ―に乗る。
押すボタンは、「地下一階」。
「迷子になると嫌だから」
陸は陽菜の手を取る。
陽菜は自分の顔が瞬時に赤くなった事を悟った。
(手、手が、私、まだこんなこと……っ)
もう頭の中はパニック状態だ。
一方陸の方はと言えば、顔色一つ変えないでいる。
正確には少し頬が朱に染まっているのだが陽菜に比べれば変わってないも同然である。

(早く、地下に着いてよ……っ!!)

やっと落ち着いて来た頃、エレベータが地下一階に着いた。


(……あれ?)


陽菜は少し戸惑った。
年頃の男の子が女の子を連れて行く場所にしては……まずありえない場所である。
人ごみの中、すこし涼しい空気、おじさんの声。
簡単に言うと食品売り場である。
「明日の食材切れてたんだよなー」

……ここ、女の子と手繋いで歩く場所じゃないよね?

でも、そのおかげか陽菜もパニックしなくて済んだ。
これがカラオケとかだったらもう陽菜は疲れて倒れてしまうかもしれないからだ。
「卵と、キャベツと、あ、最近魚食べてない!!」
甘利財閥の一人息子は意外と庶民的らしい。
陽菜は脳内の陸のテキストに書き足した。
「自炊なの?」
陽菜は思わず聞いていた。
「あー、うん。一応一人暮らしだし。困ったお隣さんもしょっちゅう食べにくるしで……」
少し困った風に陸は言う。
(へー……陸くん、一人暮らしなんだ)
不覚ながらも陽菜は関心してしまう。
「困ったお隣さん?」
「ああ。連絡なしでいきなり『おなかすいたー』は本当に困る。せめて連絡くらいしろよっての。あれ? 陽菜も自炊?」
困ったお隣さん(もちろん姫のこと)のことはあまり話すと本人にバレた時の言い訳が難しいので話題を変える。
「うん、お母さんの分と私の分、作ってる……」
「へー……偉いな。お母さんも喜んでるだろ?」
陸は陽菜の頭を撫でる。
陽菜は少し頬を朱に染め、表情を曇らせる。

「喜んでるか……わからない。お母さん、私の事嫌いだから……」

悲しそうに言う。
「どして!? 俺みたいなガサツで礼儀のかけらも無い男だったら分かるけど、陽菜みたいにかわいくて聞き分けの良さそうな女の子が嫌われるんだ?」
陸は驚いた。
「私人見知りで、世間に出したら嫌われるタイプらしくて……」
陽菜は落ち込む。

「そりゃまた贅沢なお母さんだなー。ご飯作ってくれるだけでも幸せなもんなのに。俺みたいな親不孝の子供だっているのに」
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