そして思春期真っ最中発情少年に冷たい目を向けると陸は陽菜の手をひっぱって早足で桜並木を歩き出した。
(変、だよね、今更……)
もう何回も握られているはずなのになぜか意識してしまう。
ふいにざぁっと風が吹いた。
「わぁ……っ」
桜の花びらが一気にまるで雪の様にはらはらと降り注ぐ。
それは今まで見て来たどんな景色よりもきれいで、特別だった。
明るい髪の毛が風に靡く。
「陸くん……」
「ん?」
陸は微笑んで聞く。
陽菜は顔を伏せて上目遣いで訴える。
(わかって、くれるかな……)
今まで何を思っても陸にはお見通しだった。
ただ、恋愛どうこうについてはものすごく鈍いのだけれど。
「えっ!? 俺鼻毛出てる!?」
(……っ!! やっぱり恋愛苦手なんだ)
陽菜は解ってもらえる様に唇を見ていたつもりなのに陸は見事に鼻毛と勘違いした。
そう、この桜並木でキスをしてほしかったのだ。
「そうじゃなくてっ」
「もしかしてお前まで俺の顔キモイとか思っちゃったり!?」
「ちがーうっ」
(駄目、このまま遠回しな事しても気づいてもらえない……っ)
うーむとまぬけな顔で本気で悩んでいる陸の耳元でそっと呟く。
「キス……してほしいの……」
「え……っ」
声に出すとやはり恥ずかしい。
陸は全く予想外の事を言われたのは真っ赤になって固まっている。
(ぇ!? あ、そっか、鼻じゃなくて唇だったのか!?)
『馬鹿、間抜け。童貞』
戦闘兵器までいじめてくる。
(うっせ、あとでぶっ殺す。ってか童貞で何が悪い!! 俺まだ十五歳だもんっ)
『……それ以前にお前の生殖器ちゃんと機能しているのか?』
(なっ、お前まで俺のこと馬鹿にして……っ!! 俺女じゃねぇし!! ちゃんと男だし機能してるしっ)
人ならざるものまでにも侮辱された女顔陸は呪う。
「やっぱり、駄目だよね……こんな人前で……」
目の前を見ると陽菜は寂しそうに震えていた。
(あ、やべ、泣かした……?)
キスを拒絶されるショックは陸も知っていた。
「いいよ、今人居ないし」
小さい陽菜を上から抱きしめて口にそっと優しくキスをする。
瞬間、甘い心地良い感覚が体を支配する。
「じゃ、行こうか」
「うんっ」
本当はあのままここにいたかったのだがものすごいスピードで接近しているある気配があったので離したのだった。
そしてその気配はもう陸たちの後ろに居る。
「ひーちゃんっ♪」
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