10月18日 07時20分 伊坂 葉月
10月18日 現在時刻 07時20分
「脱出出来るって、本当に沖田君!」
沖田君に担がれながら問いかける。
「ああ、脱出は出来るが・・・・・・」
沖田君は何故か言葉を濁す。
何か考え事をしているというよりは私に何か隠そうとしている感じがした。
「ねぇ、沖田君?」
「ああー駄目だ、やっぱ秘密には出来ないな」
「秘密って」
「ちょっと待てあいつらを完全に撒いた後で詳しく話す・・・・・・葉月最近急に意識が無くなる事無かったか」
「・・・・・・それは、何回か」
「・・・・・・そうか」
しばらく走っただろうか、沖田君は四方を確認し物置部屋みたいなとこに私を連れて入る。
沖田君は全力で私を連れて走ったせいか息遣いがとても激しい。
そしてしばらくすると息も整い真直ぐに私を見つめる。
私は恥ずかしさで目を逸らそうかと思ったが沖田君の目がいつものおちゃらけた感じと違った。
私も沖田君を見つめる。
沖田君は静かに語り出す。
「まず始めにだが、葉月お前・・・・・・多重人格ってことは気付いているか?」
「えっ?」
「葉月を捕まえようとした連中も言っていたろ、話の内容はわからないがたぶん卯月を出せとか」
「・・・・・・そう言えばあの人達も」
「俺が知っている所までだが、葉月の中には卯月、水無月という他に二人の人格が存在する」
「そんなこと、信じろっていうの」
「葉月と別れた後、あの二人組に遭遇し尾行してたんだが、その捕まってしまってな・・・・・・すぐに来れなくてスマン」
沖田君の顔をよく見てみると大きな痣がいくつも出来ている。
打撲による皮下出血だろうか見ているだけで痛々しい。
「何とか運良く逃げ出せたら男の悲鳴が聞こえたんで向かってみると葉月、お前が何度も何度も大男に刃物を突き立てていた」
「・・・・・・そんな」
「そこで俺は確信したんだ、あの二人組が言ったことは全て本当の事だと」
少しの間だが静まり返り、また沖田君が話を続ける。
「・・・・・・たぶん殺人を犯していたのは別人格の水無月って奴だ、あまり気にするな」
「・・・・・・気にするも何も本当なの?」
「ああ、だがあの二人組の目的は卯月という人格に会いたがっている、その卯月がこのゲームの全てを知っているらしい」
さっきまで起ちながら話していた沖田君だが、途端に膝を降ろす。
「お、沖田君」
「大丈夫、急に目眩がしただけだ・・・・・・葉月、負担を掛けるかもしれないが卯月を呼んで見る事は出来ないか」
「そんな事出来るわけ・・・・・・」
「葉月、時間が無いんだ・・・・・・あの二人組も主人格の葉月が呼びかければ卯月が出てくるかもしれないと言っていた、それに賭けるしか無い」
遠くから足音が聞こえる。
あいつらが私達を探している。
私は駄目元で頭の中で呼びかけてみる。
何度も何度も
だが、何も起こらない。
そんなことをしている内に部屋の扉が勢いよく開いた。
二人組の一人、細身の男だ。
「お、沖田君どうしよう」
ふと、沖田君の方を見ると、沖田君は笑っていた。
「八神ぃぃぃ、お前の言うとおりやって見たが全然駄目じゃんこの方法」
「お前の演技が下手糞なんだろ神谷、おおっと今は沖田だったっけ」
「どっちでもいいさ、あーあ振り出しに戻ったって訳か」
私が唖然としていると八神という男が私の胸倉を掴み思いっきり殴り飛ばす。
「あ、ああ」
悲鳴を上げる間も無く拳が私に降りかかってくる。
「この女、早く卯月に変われば言いものを手間掛けさすんじゃねぇよ」
「た、助けて、お、おき、おきたく」
「ははっ、この馬鹿女まだ、気付かねぇのか俺達とこいつは組んでんだよ、お前は騙されてんだよ」
「ああああああっ、八神忘れていたわ」
途端に沖田君が大声を出す。
そして真直ぐ私達の方に向かい私に跨っている八神を蹴り飛ばした。
「はっ、神谷、お前正気か」
「・・・・・・出会った時約束したんだよ、出来る限り守るってな」
10月18日 現在時刻 07時45分
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