「よかった‥」
寝台に横たわる君を見て、僕はそう呟いた。
今日は特別な日だった。
彼女にとって
とても‥悲しいことが起きた日。
最初は見ているのも辛いくらい憔悴していたけど、
あれから一年経った今では笑顔を見せてくれるまでになっていた。
今日は特に笑顔が多かった。
「本当に‥よかった」
そっと微笑み枕元を見る。
そこには、僕と彼女が笑い合っている写真と、一対の指輪が月明りを受け輝いていた。
……と、
彼女の苦しげな声が聞こえ、僕は目線を戻した。
「……あ…きら…」
彼女はそう漏らすと、頬に雫を滑らせた。
いくら普段の生活では元気に過ごせていても、夢の中では思い出してしまうのか…。
月明りで輝くその雫に誘われるように、僕は彼女に手を延ばした。
でも‥僕が彼女に触れることはない。
触れたくとも、触れられないのだ。
この、実体を持たない身体では‥。
僕は一年前、死んだのだ。
彼女を‥庇って。
その日に僕はプロポーズをし、指輪を渡した。
彼女はとても、とても喜んでくれた。
でも、それで注意力が散漫になったのか、
車道から突っ込んできた車に気付けなかったのだ。
あの時の彼女の錯乱ぶりは、とても目が離せるものじゃなかった。
僕は君の傍に残ろうと思った。
でも‥
「もう大丈夫‥だよね」
夢に見たり、たまに思い出して悲しむ事はあっても
もう自暴自棄にはならないだろう。
悲しみはずっと心に残るかもしれないが、
これから訪れる幸せが
その痛みを和らげてくれるだろう。
僕が君の隣に……
居なくても。
「ずっと…
ずっと君の傍に……居たかった」
僕は最後に、彼女の額に口付けると
月明かりに溶けるように
薄れ…消えていった。
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