第二話:彷徨い
気が付いたら僕は自分の家に戻っていた。
(父さんや母さんがこのことを聞いたら何て思うだろう…)
満月の夜、僕は自分でもまだ信じられていないまま家に帰った。
「ただいま。」
…………
そこはいつもと何一つ変わらない自分の家だった。
母と父はいつも通り、夜九時をすぎても仕事から帰っていなかった。
けどそれは、僕にとっては当たり前のこと、いつもの普通のことだった。
僕の家は母と父と妹と僕の四人暮らし。
妹は僕の二つ下で中学三年生。毎日夜遅くまで友達と遊びほうけている。
(美姫のやつ、まだ中学なのに何考えてんだよ…)
妹の名前は美姫、ちなみに母は早智子で父は健三郎……
(…なんで父さんと母さんは僕に、彰って名付けたんだろう…)
僕の名前は彰、斉藤彰。
どこにでもありそうな普通の名前。今までは自分の名前由来なんて、全く考えたことがなかった。
でも…
僕の頭には、僕が生まれた時にしたであろう母と父の顔が何度も何度も、頭の中に浮かんできた。
「父さん……母さん………」
僕は部屋の電気もつけず、何をするわけでもなく自分の机に座った。
僕の頬は湿っていた…
(何で…泣いてるんだろ…)
自分が癌だなんて、信じられるわけがない。
でも…
受け入れないと、いけないから…
「何やってるんだろ。」
僕が机から腰をあげたとき、リビングの電話がなるのが聞こえた。
「母さん…かな?」
いつもこの時間になると電話をくれるのは母だった。
夜ご飯のこととか、そんな平凡なことを伝えるために。
僕は二階の自分の部屋からおりて、まだ鳴りやまない受話器に手をのばした… |