例えば、ここに人類最強にして最弱の語り手がいたとしよう。
少年はあらゆる戯言をもって、精神を殺しつくす。
かたや、人類最弱にして最強の聞き手がいたとする。
少女はあらゆる話を知るが故に、耳に入った戯言を『聞き殺す』ことが出来る。
少年は語り手であるから言葉を持って、存在する人類全てを殺すことができるが故に、最強。
少女は聞き手にしか成りえず、相手を殺しつくすどころか、傷つけることすら出来ないが故に最弱。
少年は語り手故に、言葉に耐え得る存在には絶対勝てないが故に、最弱。
少女は聞き手故に、あらゆる言葉を把握し、分別出来る故に、最強。
ならば問おう、これからの会話はどちらがどちらなのか。
「なぁ、死ぬのかな?」
真っ暗な闇の中、薄っすらと映る黒い影が二つ。そのうち一つは腰を落とし、息絶え絶えに口を開く。
「ええ、死にますね」
「そうか、残念だ」
皮肉を浮かべるように笑う、笑う、笑う――やがて諦めを顕し、また笑う。
「じゃあな、最強」
それにつられ、笑うもう一つの影。
「ええ、さよならです、最弱」
息絶えた影を見下ろし、もう一つの影は真似をするように皮肉に笑った。
さぁ、どちらがどちらなのか貴方はわかるかな?
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