俺の名前は藤崎 恵太
ごく普通の高校二年生の男だ。
そんな俺には幼馴染みがいる。
名前は川島 葵
こいつもごく普通の高校二年生の女だ。
俺の親とこいつの親はすごく仲良しで、俺とこいつは赤ちゃんの時から顔見知りだった。
しかも、家が隣。正真正銘の幼馴染みなのだ
もちろん最初から仲良くて、いつも一緒だった。
その関係はずっと続いてた。
* * *
暑い。
照り付ける太陽の日差しが窓越しに教室に突き刺さる。
木には青々とした葉がびっしりとつき、蝉が泣く。
そう…今は夏。
暑すぎる夏だ。
俺は授業なんてほっといて、下敷で顔をあおぐ。
なんで夏はこんな暑いんだ。
春と秋だけでいいのにな…。
あおぎながらうなだれる俺の頭に軽い衝撃が襲う。
紙くずだ。
俺は机にのった紙くずを何と無くひろげた。
「授業しろバカアホトンマ」
紙には書かれていた。
俺は眉間にしわをよせながら飛んできた方を見る。
葵だ。
葵は嬉しそうに笑いながらバカにしたように俺を指差す。
このやろ。
俺は飛んできた紙をまた紙くずにして葵に向けて思いっきり投げた。
「いたっ」
驚きで声を出し頭をささる。
俺を口を開けて固まる。
葵は
「あー、最低」と俺に言う。
そう、俺の投げた紙くずが当たったのは、葵の隣の女の子。
女の子は
「もぉー」なんて言いながら俺を睨む。
見ていた奴らもクスクス笑いだして、それに先生が気付いた。
「どうした?」
「ケイちゃんがごみ投げてまーす」
振り向く先生に葵が手を挙げながら言う。
「藤崎ぃ…お前はガキか!!」
先生は俺の元へ来て、教科書を丸めて頭を軽く叩く。
その瞬間、教室は笑いに包まれた。
そしてチャイムがなる。
「てめー、葵!!」
俺はすぐさま立ち上がり葵を指差した。
「まだ挨拶しとらん!!」
まだ俺の近くにいた先生がまたまた頭を叩く。
俺は
「いってぇ」と先生に言いながら、また教室は笑いに包まれる。
そして挨拶が終り、俺は葵の元へ駆け寄った。
「な〜に?」
バカにするように座りながら俺を見上げる。
「な〜にじゃねぇよ。笑われたじゃねぇか!!」
俺は怒りながら葵の机をバンバンと叩く。
「な〜にが笑われたよ。いっつも笑われてんでしょ!!」
「うっ…」
葵の言葉に俺はひるんだ。
「さっき笑われたのもコントロールがなかったからじゃん」
勝った!!という表情をしながら俺を見る。
「てんめぇ…こうしてやる」
俺は言い返す言葉が見付からずに葵の机にあったカラーペンで
「バカ女」と大きく書いた。
「あぁ、何すんのよ!!!」
葵は焦ったように手で文字をこする。
「わかりやすくしてやったんだよ。お前の机だって」
俺は焦る葵に満足して教室を出ようとしたら、葵が油性マジックペンを持って、俺の机に近付く。
「お返し〜!!」
葵は俺に聞こえる声で言いながら、俺の机に何かを書く。
俺は声に気付き葵の元へ急ぐ。
「あぁー!?なんて事すんだよ!!」
油性マジックペンで机いっぱいに書かれていた文字を見て、俺は青ざめる。
書かれていた文字は
「うんこ」だった。
「わかりやすいでしょぉ?」
葵は俺の反応を見て、心底嬉しそうに笑った。
「てめぇ〜……」
「なによぉ〜……」
睨み合う俺と葵。
少しして教室にいた生徒達の冷たい視線が二人を襲った。
俺と葵は視線に気付いて、赤くなりながら葵は俺から、俺は葵から目を反らし離れた。
そんな二人を見ながら、生徒達から言葉が飛び交う。
「やっぱお似合いだよなぁ」
「もう付き合ってんだろ?」
しまいにゃ、ヒューヒューとやられた。
俺と葵は恥ずかしくなって、教室から逃げた。
「たく…俺らが付き合うはずねぇよなぁ?」
顔を赤くして息を切らしながらしゃがみこむ葵を見ながら、溜め息をつきながら言う。
しかし、葵はよほど疲れていたのか、赤くなったままで聞こえていなかったらしい。
「…葵?」
俺は葵の肩に手をおき、顔を覗きこんだ。
「え、あ!?なに!?」
葵は俺の顔に驚きながら立ち上がり離れる。
「驚きすぎだって…」
俺は、驚き離れる葵に笑いながら言った。
「ご…ごめん。あ、あたし教室帰る」
葵は笑う俺をよそに、何か元気なさそうに教室へもどっていった。
「なんだ…あいつ…。いつもならもっとつっかかんのに」
俺は葵の様子に調子をくるいながら頭を掻く。
そしてチャイムがなったので、教室へ戻った。
そのまま授業は終っていき、あのまま葵と話す事なく学校が終った。
鞄を持ち、教室を出る前に葵を探したが、教室にはいなかった。
なんだ、あのやろぅ…先帰りやがったのか…
俺と葵はいつも一緒に帰っていた。
一番の理由は家が近いからだが、もう一つに恋人ができないと言うことだ。
俺は告白されるほどかっこよくもないし、告白するほど好きな奴もいないからだが。
あいつは意外に可愛いし、性格も俺以外にはやさしい。
付き合っていてもおかしくないし、何人かのかっこいい奴に告白された事もあるほどだ。
だが付き合ってない。
俺は何かいつもとちがうのに物足りなく感じながら、校門を出た。
「ケイちゃん!!」
後ろから声がかかる。
俺の事をケイちゃんと呼ぶのは葵しかいない。
「葵?」
わかっているのに確かめるように言いながら、振り向いた。
「一緒に帰ろ」
いつもしている事だが、改まって言われると何だか照れ臭い。
俺は鼻をこすりながら
「お、おぉ」と照れながら言った。
そして、二人で家へ向かった。
「何で教室にいなかったんだよ?」
俺は気になってた事を聞いた。
「ん……トイレ」
鞄を背中の腰辺りで両手で持ちながら、前だけを見て葵は言った。
「あそ」
俺は何故かがっかりした。
……沈黙が続いた。
葵は前だけをずっと見てるし、俺は横にいる葵をちらちら見るだけだった。
そのまま歩いてたら、急に葵が立ち止まり俺を見た。
それに気付き、俺は葵をみた。
「どした?」
俺はドキドキした。
俺を見る葵がやけに綺麗で可愛く見えたからだ。
葵は何か恥ずかしそうにうつむいてから俺を見ていつになく丁寧な口調で言葉を発した。
その瞬間、俺は氷ついた。
そして、葵は氷つく俺に今までで見たことのないほどの笑顔を見せた後、走り去った。
俺は静かに歩き出して、近くの公園のブランコに座った。
葵が言った言葉はこうだ。
「大好きです。ずっと…ずっと前から大好きだった。………付き合って?」
こんな事…まさか言われるとは思わなかった。
葵が俺に…俺が葵にじゃなくて葵が俺に…
俺は嬉しいような、恥ずかしいような気持ちが込みあげてきた。
そして俺はある決心をして家へ帰った。
家の前で来て隣の葵の家を覗いたが、葵の家の電気は消えていた。
俺はどっか行ったのかと思い自分の家へ入った。
「恵太!!どこ行ってたの!?葵ちゃんと一緒じゃなかったの!?」
家へ入った途端に母の怒鳴り声が耳に入った。
「と…途中まで…」
慌ててる母の口から葵の名を聞きさっきの事で戸惑いながら言う。
「葵ちゃんが…葵ちゃんが…交通事故に…」
急にシンとなった。
まるで、時が止まったみたいだった。
俺は立ち尽くすだけだった。
「とにかく…今タクシー呼んだから病院に!!」
母は立ち尽くす俺の腕を引っ張り、外へ出た。
少し立つとタクシーが来て乗った。
車の中で、俺はとにかくいろんな事を考えていた。
葵が交通事故…嘘だろ…
さっきまでいたじゃん…
なんだよ…
俺は必死で祈った。
たいした事ない
かすり傷だ
そしてタクシーが止まった。
俺は飛び下りて、病院へ入った。
葵のいる病室を聞いていなかったが、何故かわかった。
いや…というより導かれた。
走った。
走りながら考えた。
俺はお前が好きだよ。
大好きだ。
だから…だから…
「葵!!」
俺は一つの病室のドアを開けて叫んだ。
そこには、声をあげて泣く葵の母と、うつむきながらその背中をさする葵の父と、ベッドの上に寝転ぶ葵がいた。
「……嘘…だろ…」
俺は葵の顔の覗いた。
「そんな……起きろよ…」
そこには穏やかで綺麗な葵の顔があった。
「暑いだろうが……そんな…ふと…ん…」
言葉を言いながら俺は涙を流した。
大粒の涙が葵の顔を濡らした。
それは葵が流した涙みたいだった。
俺はかがんで葵を抱き締めた。
葵の体は綺麗だった。
どこも怪我してなかった。
さっき見た葵だった。
大好きな葵だった。
「俺の……こた…え………聞いて…くれよ」
俺は抱き締めながら葵の耳のそばですすり泣いた。
「好きだよ……大好きなんだ……。世界一だよ………。だから…だから…」
目を覚ましてくれよ
数日後、葵の通夜があった。
俺は出席しなかった。
死んでるのを認めるのが怖かった。
葵が告白した場所で、俺は葵との思い出を思い出していた。
そして、何度も死を認めてる自分が嫌になった。
怖かった。
こんな簡単に死を認める自分が怖かった。
そして、涙があふれた。
あの時、すぐに抱き締めれば…
あの時、すぐに伝えれば…
あの時、一緒に帰っとけば…
だが、別れ。
永遠に葵とは会えない。
だから言います。
俺はあなたが大好きです。
きっとこれからもずっと。
あなたに届くまで…
何度でも
俺の大好きな人
あなたは俺の初恋でした…。
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