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No.3 弁当争奪作戦

「あ〜疲れた……」


「なによ?アンタが悪いんでしょう!?」


 俺と久留美は学校に辿り着き、このような会話をしていた。

 登校中、久留美に首を絞められ危うく殺害されてしまうところだったが、向こうから朱雀高校の生徒が来るのに気付き、


『ジュンく〜ん、足が痛いの。オンブして?』


 などと言って誤魔化していた。

この猫被り野郎!!

 まあ別にいいけど……そんなことより、


「久留美、オマエ何部に入ったんだ?」



「え?私は――」


『久留美〜、おはよ〜』


 丁度いいタイミングで久留美の友達があらわれてしまった。


「あ、おはよ〜! ジュン、また後でね」


「あ、ああ」


 そう言って久留美は女の子が集まって話をしている中へまじってしまった。

 俺はそのまま自分の席に座る。


『おう! 純也。久しぶりの登校か?』


「ん? ああ、優か。久しぶりだな」


 目の前にいるヤツの名前は柿崎優かきざきゆう

 身長は178センチでショートヘア、全体的に軽くワックスを揉みこんでいて、若干ハネた髪が特徴的な人物だ。コイツもストリートバスケをやっている。 俺との戦績は俺のほうが多く勝ってる。

 でもコイツは今、とあるバンドのギターを担当しているので、最近はなかなかバスケにこない。



「優、たまにはストバスこいよな」


「時間があったら行くよ。最近バイトが忙しいんでね。バンドは色々とお金がかかるんだよ。」


 コイツのバンドは地元では圧倒的人気を誇っている。

 このまま続ければいいところまで行くだろう。


「そういえばジュン。なんでいきなり登校してきたんだ? 俺はもうやめると思っていたぞ」


「ああ、それはな……」



 あれ?



 木……



 木ノ下……



 がんばれ俺…もうちょい。



「木ノ下………薫!! そうだ、木ノ下薫だ!! 優、オマエ知ってるか?」


「ずいぶんと悩んでたな。木ノ下薫さんだろ? 知ってるぜ。バスケ部のキャプテンだよ。クラスの女子が騒いでたぜ。それがどうした?」


「……負けた」


「負けたって何が? 喧嘩か?」


「喧嘩は負けねーよ。バスケだバスケ。バスケットボール」


「何!? お前が!? お前がバスケで負けた話は久しぶりに聞いたぞ。それで、何点差だ?」


「……20対0」


「完封かよ!! すごいな。まあ、あの人だからしょうがないか……」


「そんなにアイツは凄いのか?」


「ああ、中学のときに全中制覇したチームのキャプテンらしい」


「何ぃっ!? 全国大会!? なんでそんなヤツがこの学校に?」


「そこまではわからない。何か理由があるんだろうな」


 アイツがそんな規模の野郎だったとは……

 よし! やる気がでてきた!


「優、ありがとな」


「ああ。でもお前が登校してきた理由と木ノ下薫が何の繋がりが?」


「いつか倒す! バスケでだ。必ず!」


「本気かよ! お前の負けず嫌いはわかるけど今回は厳しいぜ?」


「俺はやると言ったらやる」


「ふっ、そうか。ただ喧嘩はするなよ」


「おう!」


 会話が終わり、優は席に戻る。席に戻る間も、二人の女子に挨拶をされ、軽く返していた。


――木ノ下薫か……手強いらしいな。どうするべきか?


 その後、昼休みになるまでにひたすら作戦を考えていた。


 授業中にこんなに集中したのはおそらく初めてだろう。


それで、その作戦とは………。



――――――――


――――――


――――



「わかんねぇ!! よく考えたら作戦もクソもねぇ!!」


「おいおい、いきなり叫んでどうしたんだよ?」


 優が昼休みになり、俺に話し掛けてきた。クラスの奴らも弁当を食べたり購買に行ったりとさまざまだ。


「木ノ下薫をどうやったらバスケで倒せるか考えていたんだ」


「ん? お前が考えるなんて珍しいな。考えるより行動だろ? お前のスタイルは」


――考えるより行動か……たしかにそうだったな。


「よっしゃあ! 今日、部活中に殴り込んでやるぜ!」


「……本当に殴るなよ」


「わかってるって」


よし。今日木ノ下薫にリベンジしてやるぜ!!


「よしジュン。弁当にするか」


「よ〜し、弁当弁当っと」


 あれ?




 アイツ(母)に弁当もらってねぇ!! よく考えたら、朝ご飯も食ってねぇよ!!


「くそ〜、そう考えたら急に腹が減ってきた……」


「どうするんだよ?」


「いや、大丈夫だ」


 優にそう言って俺は久留美の近くに歩み寄る。


「久留美ぃ……」


「え? な…何よ? そんなゾンビみたいな声で話し掛けないでよ」


「おい、久留美!」


「だから何よ?」


 よし、いい感じ? だぞ。後は言うだけだ。

『弁当くれ』……と。




「弁――」

「やだ」


 …………



「弁当――」

「やだ」



 …………



「便器!!」

「……」



「弁――」

「やだ」



くそ〜……なかなか手強いな。

 こうなったら奥の手だ!!


「久留美さ〜ん」

「なによ?」



「今日もとっても可愛いですね。まるでお花畑の上に舞う妖精みたいですね」

「ありがとぉ」



 そういって久留美は百万ドルの笑顔を見せる。

 いや、百円でいいや。

 俺にとっては何でもないがクラスの野郎共だったらこの笑顔で一発で撃沈してしまうんだろうなぁ。

 よし、作戦は成功に近いぞ!!


「今日も君のために世界中が全面戦争をするくらい可愛いね」

「ありがとぉ」



「弁――」

「やだ」



 …………


「なぁ久留美? 考えてみろよ?目の前にガリガリでお腹をすかした猫がいたらどう思う?」

「かわいそうね」



「自分の手には弁当。猫は助けを求める目でお前にすがりついてくる。お前はどうする?」

「それは………お弁当を分けてあげるわ」



「そうだろ!? そうだよな!?」

「猫、可愛いもんねぇ」



「だからよ。俺に弁――」

「いやだ」


 …………



「ニャー」

「ゴキブリにあげるお弁当は無いわ」



 グサッ!!


 あれれ? なぜか心にグサッときたぞ?

 なんでだろう? よく考えてみよう。


 久留美が猫に弁当をあげるって言って俺が猫の真似をしてみて……

 つまり、話の流れからして……


「俺がゴキブリっていうことになるじゃねえか!!」


「気付くのが遅いわね!!」


「て……てめ〜!! ゴキブリはあまりにもひどすぎると思うぞ!?」

「じゃあネズミかしらね?」


「ネ、ネズミ! ネズミは嫌いなんだよ! うがぁぁぁぁっ!」



 こんな争いが数分続いたのだった。


――――――


――――


――


「……ジュン」


 優が俺に話し掛けてきた。


「あ? 優か。悪いが邪魔をしないでくれ。俺はこの猫被り女に――」

「だ〜れが猫被り女ですってぇ!?」



 俺たちの争いは激化していた。



「あのな…ジュン」


 優がまた話し掛けてくる。


「なんだよ!?」


「もう昼休み終わって授業始まってるぞ?」


「え?」


 俺と久留美は同時に石のように固まった。

 よく見てみると先生も、もうすでに来ているようだ。

 クラスの注目の的になってしまった。


「まったく、久留美が弁当をよこさないから――」

「どう考えてもアンタが悪いでしょうが!」


 また争いが始まってしまった。



『うるさい!!』



 その後先生の逆鱗に触れ、二人とも廊下に出されてしまったのは言うまでもない……

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