第三話 「いざ部隊室へ」
「ジョン、君の配属先がなぜ第三歩兵突撃部隊になったかわかるかね?」
「……は?」
猫を無事預け終え、二人の後を着いて歩いていると、突然隊長がそんなことを俺に聞いてきた。
「えー……正直に言いますと、全くわかりません」
さっきまでその事で悩んでいたんだ。こんな良くも悪くも平々凡々な俺が、なぜイキナリ最前線に行かなければならないのか。そういえば他のヤツが『教官にコーヒーをぶちまけちまった!絶対最前線に飛ばされる!』とか叫んでたな……そんなこともして無いしなぁ。
「君の事は、アランが選んだんだよ。まぁ、たしかに、君はうちの部隊に足らない種類の人間かもね」
ケビンはクスクス笑いながらそう言うと「ね、アラン」と続けた。振られた隊長は黙って苦笑いしているだけだが。
というか、前線の部隊ってのは自分たちで誰を部隊員にするのか選べるのか。それさえも俺はしらなかったわけだが。
それにしても話せば話すほどこの二人のことは解らない。ケビンは、最前線にいるにしてはえらく学者っぽい感じがするし、隊長は前線というよりは上層部で指揮をとっていそうな風貌だ。
実際、ケビンと隊長が銃を手に銃弾の中を駆け回る――なんて、想像力の乏しい俺には、到底想像できない。
「そろそろ着くよ」
ケビンがふとそんなことを言った。気づけば回りは壁に囲まれている、どうやらここが正規軍の宿舎らしい。
想像していたのとは大分違うな。もっと薄暗くて小汚い所かと思っていたが、訓練生の宿舎より数倍綺麗だ。
二人が一つの扉の前で立ち止まった。扉には『003A』の文字。どうやらここが第三歩兵突撃部隊の部隊室らしいな。おぉ、最新式の音声認識システムの扉だ。
だが、俺がぼんやりとそんな事を考えていると。部屋の中から金属音と共に岩の砕けるような怒号が聞こえてきた……なーんかやな予感。
「ん……あぁ、あの二人、またやってるようですね」
「そのようだな。」
隊長とケビンはそんな事を言いながら扉を開けた。なんか、入りずらいなぁ……。
だが、入らないわけには行かない。俺が通ると扉は自動的に閉まり、短い廊下を通って部屋に入った。
そして部屋に入って一番最初に俺の目に飛び込んできたのは、鈍く鉄色に光りながら俺のほうに向かって飛んでくるパイプ椅子――パイプ椅子!?
「うおっ!」
俺は全身全霊をかけて脳から膝に運動命令を出した。
パイプ椅子は俺の頭上数センチをかする様に飛んで行き、後ろの壁にぶち当たった。咄嗟に避けなければ、間違いなくヘッドショットコースだったな……。
「あぶなかった……」
とりあえず尻餅をついている体制から立ち上がらねば、人間が尻餅をついてへたり込んでいるなんて、あまり格好の良いものじゃないからな。
全く、相変わらず俺は運が悪い。まぁ、この場合避けれた分だけまだまし――
「ジョン! 前だ!」
え?――という声と共に前を向いた俺の目に映ったのは。視界いっぱいに鈍く光る鉄の塊。
一瞬頭の中で光が瞬いたかと思うと俺は全身の力が抜けていくのを感じた。
倒れた俺の目が最後に映し出したのはやはり、パイプ椅子。
まさか二発目があるとは思いもよらなかっ、た、ぜ――
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