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―プロローグ―
 人類は増え続けた。

 第二次世界大戦以降、人口を下降させるような数合わせは幾度無かった。
 その結果、人類は"地球"という(イレモノ)では収まらないほどの数になってしまった。

 ある時、世界中の学者や権力者が一同に介した会議で、地球で一番権力のある男が言った。
『場所が無いなら作ればいい』と。

 その頓知の様な偶発的な考えに、様々な案を練り続けて心身ともに疲れ果てていた人類は賛同した。
 この時人類は、初めて真面目に"地球"という箱の外に目を向けた。
 すぐに"第二の地球製造計画"なるものが立案され、大陸のプレートが動くように少しづつ動き出した。

 その計画が立案されてから数世紀の月日が流れた。
 数世紀の間には、計画に反対する者や賛成的でない者も現れたが、彼らの誰もが『ではこの計画以上の案はあるのか』と問われると、口をつぐんだ。
 そしてついに人類は成し遂げた。

 "第二の地球(セカンド・ワールド)"の完成である。

 試験運行期間もそこそこに、政府要人や軍事関係者以外の60%近くの住民が"第二の地球"に移された。それほどまでに地球という箱は限界だったのである。
 "第二の地球と、元の地球、いや、"第一の地球"とは、お互いに絶えず信号を出し続け、双方問題ないという事を確認しあっていた。
 そして幸いなことに大きな事故もないまま、さらに数世紀が過ぎた。


 しかしある時、()()は起こった。

 ()()()()に一番初めに気づいたのは、"第一の地球"で一番大きな軍事基地の一室にいた男だった。
 彼の仕事は、"第二の地球"からの信号がきちんと受信できているかをチェックする、という、重要なのか重要でないのか意見の分かれそうな仕事だった。
 しかし誰もが受信を確認することが重要なことだということは認識していたし、人口が増えたために様々な仕事があったので、特に文句も無かった。

 ある日、彼はいつも通り信号が受信できていることを確認するためにパソコンに向かった。実は彼意外にもこの仕事をやっている者が数名いて、彼は4~5時間置きに一回チェックすればよかった。
 だが、パソコンの画面に映し出されていたのは、彼が想像していたものとは違った。パソコンの画面には『受信できていません』の文字。

 彼は一つため息をつくと、すぐパソコンの脇にある電話の受話器を取り、前にも数回ダイヤルした番号を押し、信号が受信できていない事を伝えるべき人間に伝え、部屋を出た。

 電話を受けた彼の上司にあたる人間は、彼と同じようにため息を一つついた。
 実はこの"通信が途絶える"という現象は、"第二の地球"の完成当初からの問題だった。
 原因は不明だが、そのほとんどは、『一度双方ともの信号を切り、再度送信する』というなんとも原始的な方法で解決した。

 当初こそこの男も慌てふためいたが、こう何度も何度もとなると、ため息の一つもつきたくなる。
 男は大儀そうに腰を上げて部屋を出ると、通信室に行き、"第二の地球"での男と同じ立場にある人間に連絡を取るよう通信室長に伝え、通信室を出た。

 通信室長もため息の一つぐらいつきたかったが、部下の手前威厳を放っていなければいけない、あくびを噛み殺す時のそれのように必死に抑えると、手元の珈琲を不味そうに飲んだ。
 その後、やはりいつものように"第二の地球"に連絡を取ろうと試みた。

 「また信号が途絶えています。いつもの通りに」連絡を取ってこれだけのことを言えば、通信室長はまた自分のデスクでゆっくりと美味い珈琲を堪能できる。
 しかし、五回、六回と何度連絡を試みても連絡がつかない。こんなことは初めてだった。
 そして通信室長は悩んだ挙句、自分の上司、詰まる所の基地司令に連絡を取った。

 基地司令はすぐに通信室に入ってきた、軽い挨拶を済ませた通信室長は再び現状を伝え、基地司令の前で再度連絡を試みた。やはり連絡はつかない。

 基地司令は通信室を出ると、緊急会議を開いた。
 会議はすぐに『調査隊を派遣』という結論を導き出して終わり、会議に出た者達も足早に会議室から出て行った。

 連絡が取れないのだから、生身の人間を向かわせるしかない。単純な話である。すぐに50人ばかりの調査隊が編成され、"第二の地球"二、三日でつける高速船に乗って"第一の地球"から飛び立った。

 調査隊の隊員達も勿論こんな事は初めてだが、信号が度々途絶えるというのは軍関係者ならばよく知っている話だし、自分達がなぜ行かなければいけないかということも、よく承知していた。
 隊員の一人は言った。「どうせ向こうのレーダーがちょっとおかしいだけだ。ちょっと行ってチャッと直せばすぐよくなるだろ」これはこの事に関わった全員の代弁であろう、実際調査隊の隊員たちも、小旅行ぐらいの軽い気持ちだった。

 調査隊が発ってから3日後、予想通り連絡が基地に届いた。
 そしてすぐにまた緊急会議が開かれた、全員が面倒くさそうに会議室に集まり、面倒くさそうに着席した。
 そして録音した物が基地司令の合図で会議室に流された時、会議室の気怠そうな空気は、一陣の風が草を薙ぐように吹き飛んだ。

 会議室に流れたのは、断続的な爆音と、耳障りな金属のはぜる音と、この世のものとは思えない金切り声を上げて泣き叫び、助けを乞う隊員達の声だった。

 会議に参加した全員の顔に脂汗が浮かび、数分の沈黙が流れた。そして基地司令が地鳴りのような重い声で言った。
「……救出部隊を編成して派遣しようと思う。反対意見のあるものはいるか?賛成ならばご起立願う」
 全員がぎこちなく立ち上がった、それと同時に基地司令が言いたいことも理解していた。

 編成するのは救出部隊とは名ばかりの、攻撃部隊であるという事を……


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