〜一走決め〜PART2
一走決めに出るのは柴田を含めた三年生五人と、二年生の慎一の計六人、100m走で、タイムは一斉に計るというシンプルな方法。
タイム計測は写真判定、これを使用するのに市長へ申請が必要なのだが、陸上部顧問の空西澪は、市長の一人娘と言うことなので、自由に利用することが出来る。
これは、陸上部のただ一つの特権である。
「ほんじゃ、ぼちぼち始めるかね」
澪が呼び掛けて、六人がスタートラインに集まる。そして、他の部員は一時練習を中断し、集まってきた。
スタートラインのまわりが観客で埋まる。
「各自、準備してくれ」
六人全員がスタブロ《スターティングブロック》を調整しだす。
すると柴田が、密かに慎一に耳打ちした。
「なぁ相模…」
「はい?」
調整を中断し、柴田の方に耳を傾ける。
「お前…負けてくれないか…?」
「……はい?」
確かに聞き取れたが、聞き間違いかと思い、もう一度聞いた。
「いや、なんでもない…」
そう呟いた後、微かに舌打ちが聞こえた。
これも、聞き間違えだろうか…?
「それでは、位置について…」
それぞれがスタブロに足を掛ける。
静かに体制を整え、足に力を溜める。
「よーい…」
高々と右手に持った雷管を上げる。同時に、選手もゆっくりと足を伸ばし、尻を上げる。
パァン!!
破裂音と共に、一斉に選手が風を切った。
―この時の向かい風、風速0.5m―
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