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優しき風が吹く頃に
作:彩BOC



〜放課後〜


「よし、これで今日のH.Rは終わりだ。部活があるやつは早く行けよ」

伊藤先生の話は短くていい。たまに自分の昔話をして長くなる時もあるが…。

「慎一〜、帰りにゲーセン寄ってかね〜か?」

慎一に寄り道を誘ったのは、前の席の室井健。慎一とは保育園からの幼馴染みで、見た目に反して意外に気の抜けないヤツである。しかし、普段は上の空な性格なので、幾度となく赤点スレスレの場面に出くわしたか…。
「あれ?今日て、部活無かったっけ?」

陸部でもうじき夏のインターハイに続く大事な大会があるので、部活の練習量も半端無く増えている。顧問の空西澪は、夏になったのがうれしいのか、かなりテンションが上がってきて、たまに部員と混じって走ったりしている。
彼女もまだ職員の中では一番若いので、まだまだ生徒には体力的にも負けてない。

「や、あるにはあるけどさ、たまには息抜きもどうかな〜と…」

「息抜きをするのは夏が終わってからにしな…」

知らぬ間に健の背後にそびえ立っていたのは、今まさに話に出てきた陸上の顧問、空西澪先生。足音すら立てないとは…。噂をすれば影とはまさにこのことだ。

「まったく、まだ二年坊のクセに、早速サボろうなんていい度胸してんな。お前には400mのインターバルを死ぬ程やらせてやろうか?」

あからさまに怒のオーラを出しつつ、冷静さ故に笑顔を保っている澪を見た健は、動揺した。
左手に持っていたストップウォッチをひっきりなしにカチカチ鳴らせている。

「じょ、冗談ですよ〜…。大会も近いですしね、ちゃんとやりますって」

言ってる事とは裏腹に、健の目は明らかに泳いでいた。

「それと、慎一。後で職員室に来な。話があるからさ、ほら!健坊もさっさと部活に行く!」

「はっ、はいっ!」

澪に思わず敬礼して、健はその場を後にした。
そして澪もじきに続いて立ち去った。

「なんだろうね、話って」
ずっと隣の席で今までの会話を聞いていた加代が話しかけてきた。

加代は家庭部なので、今の話に関連性は特にない。しかし、毎回慎一の応援に顔を出すついでに差入を持ってくるので、陸上部では必要な人材となっている。

「さあな、そういやここんとこサボってたしな。もしかしたら退部かな……」

いつもなら冗談と言って笑うのに、今日の慎一は何故かいつになく真剣だったので、加代は唖然とした。

彼は昔、人生で最愛の人を失った。いつもそばにいて、いつも一緒にいて、いつも見てくれてて、常に応援してくれてた。しかしそんな人を、殺してしまうなんて!!――――












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