〜自分の意志〜
部活が終わった後、自分がリレメンの一人と自覚した俺は、健を誘って帰り道にある公園で試しにバトンパスをやってみた。澪サンに貸してもらったバトンは、握ると何故かとても走りたい気持ちになってきた。
何か不思議な感じだな。
ふとそんな事を零すと、健は何で?と聞いてきた。
そういや、なんでだろ。今まで、誰かと協力して走るなんて…ああやったな…確か…小学校の頃の運動会とか。
妙に気持ちが高ぶるって言ったら、馬鹿だなって言われた。確かに馬鹿かも…バトン持っただけで走りたくなるなんて、けどなんか…面白そうじゃん。みんなでバトン渡して走るってさ…。
それから30分くらいやってみて、初めて難しいことに気付いた。ただ渡すだけでも、タイミングや調整がいる。
渡す時だって、渡す方はバトンを落とさないよう、相手が掴んで引っ張られたのが解って、それで手を離す。受け取る方は手を後ろに水平に上げ、掴みやすいように手をぴんと伸ばす。
距離や歩数だって、結構難しいもんだなって…。
バトンを眺めていると、柴田さんの怒った顔が浮かび上がってきた。悔しくて怒っていたのを思い出すと、何か申し訳なく思ってきた。
本当に…俺なんかで良いのだろうか……。
「どした?真剣な面してさ」
「ん」
疲れてベンチに座っていた健が近くに来た。
「いや、ただ…何だかな…」
言葉が見付からず、曖昧な返事をした。
「まぁ…見せ付けちゃったんだから仕方ねぇよ。今更慰めなんざできねぇしな」
察してくれたのか、すっきりとした言い方だった。
「けどな…」
「まだ言うか…案外優柔不断なんだな」
「……」
言い返せなくなった。間違ってない。けどさ、あんなに怒ってて、それで俺は涼しい顔して先輩を見て…なんか感じ悪りぃな…。
「あ、先輩」
幼い声が公園に入って来た。小柄な体型で、吹けば飛んで行きそうな細身の男。いや、女か…?
「何やってんスかバトン持って…ああ…」
状況を把握したのか、近づいて来て割り込む。
「あれ南、お前って一人で帰ってんの?」
ふと、そんなことが口に出た。そういやコイツ、普段部活以外で見掛けないな…。
「や、今日は相方が休みで、たまたまですよ」
はにかむように笑った。
相方って…コンビか…。
「それより、俺にもやらせてくださいよ。これでも中学の時はリレメンに選ばれてたんですよ?」
向こう側に走っていき、合図を出すように手を振る。
「ま、深いことは考えんなって。今が良けりゃいいじゃねーか」
ぽんぽんと俺の肩を叩く。コイツは昔からそうだ。先の事は考えず、今が良ければそれでいいって…。
本当に気が抜けてるよな…。羨ましく思う。まぁ、コイツなりの励ましなのかもしれないけど。
「いくぞっ」
健は南に向かって走り始めた。南が構える、そうだ。試合の時に先輩達がやっていた。あれがリレーか。4継か…。なんだか面白そうだな―――
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