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短編「プレハブ小屋の戦い」
とある住宅地のはずれに、もう五、六年も前から使われていない小さなプレハブ小屋がありました。このプレハブ小屋はとなり町にある会社が所有しているものでしたが、特に管理はされておらず、敷地にフェンスも無ければ小屋にカギもついていませんでした。
なので、いつの頃からか、近所に住む小学生五人組の秘密基地として使われるようになっていました。
ある日、それに気づいた持ち主会社の社長は、新入社員の田中に「なんとかしてこい」と命じました。もちろん、ガキどもに好き勝手させないようにしてこい、という意味です。
田中はさっそくプレハブ小屋に行きました。子供は学校に行っている時間なので誰もいません。
小屋の中はお菓子のゴミや漫画雑誌、体操服などが散乱していて足の踏み場も無いような有様でした。
「好き放題やってるなー」
田中はゴミの片付けから始めました。片づけををしていると、隅っこにダンボールが置いてあるのに気がつきました。ダンボールを開けると、中には採点済みのテスト用紙がどっさりと入っていました。
ざっと見た感じでは五人の名前が確認できました。
「どいつもこいつもひどい点数だなこりゃ」
平均点は二十点くらいでした。
「多分、点数が悪すぎて親に見せられないからここに隠してあるんだな」
田中はテスト用紙以外のゴミをきれいに片付けました。テストは捨てるのに何となく気がひけたのです。
会社からは費用が一切出ていないので、とりあえずこの日は入り口の戸に「立入禁止」と書いた簡単な張り紙だけして帰りました。
二週間ほどして田中は再びプレハブ小屋を訪れました。
小屋の中はお菓子のゴミや漫画雑誌、体操服などで散らかっていました。
「ガキどもめ、ナメてやがるな」
田中はテスト用紙以外のゴミを片付けると、今回は小屋の中にも「使用禁止」という張り紙をしました。
それからさらに二週間経って田中はプレハブ小屋を訪れました。
小屋の中はまたもお菓子のゴミや漫画雑誌、体操服などで散らかっていました。
「くそう、またかよ。張り紙の存在に気づいてないのか?」
そう思った田中は、ゴミを片付けると、壁一面に「使用禁止」や「立入禁止」の張り紙をこれでもかというほど貼り付けました。
「いくらガキでもこれに気がつかない訳がないだろ」
二週間後、田中がプレハブを訪れると、いつも通りお菓子のゴミや漫画雑誌、体操服などで散らかっていました。
田中はもう激怒です。
「ガキどもめ許さん!」
今回はゴミと一緒にテスト用紙も捨てました。近くのゴミ捨て場にダンボールごと放り投げてやりました。
「ざまあみろガキども」
それでもまだ気が収まらない田中は、子供らに一泡吹かせてやろうと思い、入り口の戸を開けて小屋に入ると上からバケツが落ちてくる仕掛けを自腹で作りました。
「大人をナメるとどうなるか教えてやるぜ!」
翌日、五人の子供は母親にこっぴどく怒られました。というのも、子供たちの母親の一人が偶然にもゴミ捨て場の清掃当番になっていて、回収されずに残っていた例のダンボールを見つけてしまったのです。気になって中を開けてみると、自分の子供及び知っている子たちの悲惨な点数のテストがぎっしり詰まっていたのです。
かくして五人は残らず学習塾へと入れられました。ハードなお受験コースです。
 五人は毎日の塾通いで小屋に行くことが出来なかったのですが、およそ一週間ぶりにみんなそろっていってみました。
 小屋の前までやってくると全員が「あっ」と思いました。
―立入禁止―
「この張り紙、漢字ばっかだから前までは読めなかったけど、今日は読めるや」
「おれも読める。塾で習った」
「立入禁止だって」
「入ったらだめなんだ」
五人は小屋に入るのをあきらめて帰っていきました。
 一週間後、田中が小屋へやって来ました。子供らがバケツの罠にひっかかったかどうかを確かめに来たのです。
 「わははー!バカガキどもー!ひっかかったかー?」
 田中が勢いよく戸を開けて中へ入ると頭にバケツが直撃しました。

              おしまい
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