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Color blindness
作:グリコ



第五章:【5】


 深い森の中央、より一層木々が生い茂り、深緑で覆われたその場所に、清んだ湖があった。透明、というよりも不可視に近い。覗きこめば、深いはずの底が見えてしまう。決して地表まで光の届く事がないこの森で、唯一光が差し込む場所だ。キラキラと輝く湖面を、小鳥達はじっと見据えている。

「……」

 何枚にも重なった大きな岩の根っこに、エレスとクリフは倒れていた。地面を覆いつくす深緑のコケ類がクッションのようになっているため、二人とも一向に目を覚ます気配がない。それどころか、すやすやと気持ちよさそうに眠っている。そんな二人の様子を、少し離れた位置から眺める一人の青年の姿があった。
上半身は裸体で、充満する湿気のためか微かに濡れている。彼の逞しい背中には、鳥の羽を思わす模様が彫り込まれており、しなやかな二の腕には色鮮やかな複数の腕輪が嵌めてあった。髪は青の色が抜けてしまったような薄い青色で、傷一つない顔は凛としている。美しい、綺麗という言葉よりも、妖艶、その言葉の方が似合う。
見かけはあまり人間と変わらない彼であったが、唯、瞳の奥にもう一つ瞳があり、その目は蛇の様に鋭く光っている。そして……何よりも違うのは、その尖った耳であった。

「……ぅ」

微かに、クリフの声が聞こえた。青年は持っていた槍を二人の方へと向け、じりじりと詰め寄った。

「……」

寝ぼけ眼のまま、微かに瞳を開けたクリフは、鼻先にある槍の穂先に思わず目を見開いた。

「いっ……!」

思わず起き上がろうとするも、寸でのところで動きを止める。

(下手に動いてしまえば、殺される──)

自分の勘を信じたクリフは、ゆっくりと両手をあげた。
それを見た青年は、クリフが攻撃してこない事を不審に思ったのか、すっと穂先を下に向けた。クリフは前の前の、真っ白な肌を持つ人間を見て何か違和感を感じていた。上体は裸であるにも関わらず、ほとんど日焼けしていないのだ。

『人間ではないな。お前ら』

青年がそう告げた事に、クリフは一瞬躊躇した後、ゆっくりと頷いた。そうして、ようやく近くのエレスも意識を取り戻した事を察知する。

『……フェリスがお前らを捕らえてきた。フェリスはエルフ以外が森に進入すると八つ裂きにする』

勘ぐるような青年の視線に、クリフはぐっと堪えた。そして背後で自分の指に触れているエレスに、今はまだ起きるべきでないと空気で伝える。

自分達を襲ったあの獣がフェリスという名だという事を知り、今はただ耐えるようにしてクリフは押し黙る。

『……お前ら──何だ?』

八重歯で唇を噛み、青年は爬虫類のような目をさらに尖らせた。クリフ達が何者なのか、分からない自分に腹を立てているのか、かなり憤怒した様子で青年は言った。途端、クリフはその場の空気が揺れるのを感じた。

(……!?)

風は吹いていないはずなのに髪の毛が揺れ、一定の周期で吹き抜ける何かがクリフの体を圧迫する。顔の前で腕を交差させ、その隙間から青年を見たクリフは、思わず息を呑んだ。

青年の体から何かが出ているのが見えるのだ。薄い青、髪の色と同じ色の…オーラの様なものが全身に纏わり付き、凝縮し光ったかと思えば、次の瞬間には青年を中心とした円の範囲に広がる。その範囲に自分は居るため、当然何かがやってくる。

「──ぐっ!」

耐え切れず、後ろに弾かれるようにして吹っ飛んだクリフは、岩に叩きつけられた。それを見た青年は、ようやく我に返ったようで、"何か"を放出するのを止めた。確かめるように指を曲げ、次に拳を作ると、青年は辛辣に告げた。


『……おれとした事が……お前ら、ついてこい。長に会わせる』

ぐったりと項垂れるクリフを支えながら、エレスは全身を駆け巡る寒気に思わず手足が震えるのを感じた。


まだまだ更新していきたいのですが、生活が忙しすぎてどうも更新する時間が取れそうにありません。それにまだまだ修正したい部分もいろいろあります、月一、もしくはそれ以上の遅筆になるかと思われます。高評価を頂いている作品ですので、頑張りたいのですが・・・・・・どうか、気長にお待ちください。











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