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Color blindness
作:グリコ



第四章:【2】


 ベルナはふぅと軽いため息をつくと、足元に広がる血の海を見た。カルロスの周りに三十人程の男が倒れている。皆心臓や首を一突きされ、血がじわじわと流れ出している。相変わらずの残虐性と攻撃性にベルナはまたため息をついた。未だ興奮冷めやらぬカルロスは長い槍をぶんぶんと振り回し、その勢いで背中へ戻すと、顔面に付着した血液を強引にぬぐった。

「相変わらず、お前は素晴らしい槍使いだな。カルロス」

ユウヤは退屈そうに足を地面に擦りつけながら、地面に下ろしていた皮袋を担いだ。カルロスは褒められた事で頬をゆるめながら自らも皮袋を持った。

「槍のほうが、雑魚共を一蹴できるからな。今日は久しぶりに暴れた。気持ちよかったぜ」

それを聞いたベルナは降参したように手を挙げ、向こうから走ってくる人影に目をこらした。

「団長ー!」

「ヘンリーに、アルじゃないか」

ようやく集った五人に、ベルナは一安心しながら、ふとヘンリーが担いでいる弓筒に興味を示した。

「弓筒?どこでそんなものを手に入れた?」

するとヘンリーはああ、と相槌をうち答えた。

「これは盗賊の一人から奪いました。なかなか丈夫で鋭いようですから、これからの旅に役立つかと」

それを聞いたベルナは満足そうに腕を組み、一枚の黄ばんだ羊紙皮を取り出した。アルは見た事のないものに食いついた。

「それ、何ですか?あと、これからどうするんですか?」

ベルナは空を仰ぎ太陽の位置を確認しながら、地図を交互に見た。

「これは先ほどの盗賊から奪ったここら周辺の地図だ。それに、殺す前にこの近くに馬車を貸してくれる所はあるかと聞き出しておいた。どうやらここを出てすぐの森を抜けたところに、ここらじゃ大きい方の街があるらしい。そこに向かう」

説明をされ、納得したアルは改めて血まみれの盗賊たちに吐き気がした。ここまで見事に心臓を一突きにされ死んだ者は見た事がない。カルロスという男の槍の腕前が、一線級であることを確認する。アゼルへ着いてすぐに襲われ、治安の悪さを思い知った一行であったが、それがまた良い緊張感を生みだしていた。






──アゼル派遣団が出発した次の日──

 「しんっじられない!」

 エレスは騎士団の本部で駄々をこねていた。自分が選ばれなかったことが未だにくすぶっているらしく、猛威を奮う台風の様に荒れる姉を、クリフはただにこやかに見つめていた。

 「何で、団長とユウヤは分かるわよ!?カルロスも元々アゼルの"赤い闘牛"出身だし、ヘンリーもアルベルトの"青い九官鳥"の団員の息子だったっていうし。でも!なんでアルが!」

 「僕に言われても分かりませんよ。それに姉さんもストロング・ヒルでのアルくんとテーラーの死闘を見たでしょう?アルくんはなかなかの素質ですよ」

エレスは顔を真っ赤にしてわめいていたが、それを聞き反論の道を閉ざされたのか押し黙った。姉の意外な反応に拍子抜けしたクリフはポカンとしていたが、次に来客を告げるノックがドアから聞こえたので、すぐさまドアノブに手をかける。

 「どなたでしょうか?」

 「私です。開けてもらえないでしょうか?」

その声が、自らの主君であるクリストファー・ティアベルのものだと瞬時で気がついたクリフは慌ててドアを開けた。エレスはドアの向こうにティアベルが居た事で、自分の荒れ模様を全て聞かれていたのかと思わず顔から火が出るほど恥ずかしくなったが、今はそんな場合でないと改めて向き直った。

 「貴方様がじきじきに足をお運びになるとは──一体、どうなさったのでしょうか?ティア様」

 それを聞いたティアベルは、軽く一礼をした後御付の者を下がらせ自分ひとりのみエレス達の部屋に足を踏み入れた。丁寧な仕草は、やはり元王族出身であった者の気品を漂わせる。

 「……折り入って、お二人に頼みがあります」

重苦しい空気を察知してか、エレスとクリフは直にティアベルの足元に跪いた。帯剣した剣が床と擦れ金属音がした。

 「このたび、五人の使者をアゼルへ使わせました。……しかし、仮に粗雑な馬鹿共の協力を得られたとしても、それだけでは白の羊には抵抗どころか恐らく、一矢も報えないでしょう…」

 静かな空間に、戦争を匂わせる言葉が舞い、エレス達の上に沈殿した。床についた拳を握りしめ、エレスは下唇を噛んだ。絶対に、この主人を殺させてはならないのだ。それに、自分の父親は、連中によって殺された。元・ケルディア国王の配下であった軍隊から剣の発注もくる程の名門の鍛冶屋は、国王が暗殺されると共に何者かによって火をつけられ、職人であった父も殺された。犯人は、絶対的な証拠はないが、恐らく…ルドルフ・シュバイツァーだろう。

 「そのため、あなた方二人にお願いがあります」

凛とした主人の声に、思わずエレスは顔を上げた。ティアベルは、少し眉を寄せ、肩を震わせながらも、確りと命じた。

 「ミリ大陸へ、行ってもらえないでしょうか?」












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