「奈良?」
「ああ、京都は行ったが、奈良には、行ったことはないじゃろ?」
「ああ、確かにねえけど・・・」
以前、友人の紹介で奈良の工場に工作ロボットを提供した阿笠は、そのメンテナンスのため、しばらく奈良に行くことになっていた。そのことは、コナンも聞いていたが、阿笠は、コナンに、哀と共に一緒に行かないかと誘っているのである。
「でも、旅費はどうすんだよ?」
「心配は無用じゃよ。向こうが二人分の旅費を出してくれるっていうし、君達は、子供料金でいいからの」
そう、コナンと哀は、今は、小学4年生。中身は、もう20歳になるが、見かけは、小学生だから、交通費は、子供料金でいい。
「なんか、わりいな」
「今更、遠慮なんて無用じゃよ・・・それにな、君達、最近、二人で出かけたりしておらんじゃろ?いつも、わしやあの子達が一緒で・・・」
「博士・・・」
「わしが仕事をしている間、二人でゆっくり観光でもしておればいいよ」
コナンと哀は、恋人同士といっても、みかけは子供だし、周りは、そう気を使ってくれるわけはない。少年探偵団の3人にしても、マセた女の子の歩美はともかく、元太や光彦は、二人の行くところ、ついて行きたがる。
時々、哀の部屋で過したりする以外、二人だけでいるということは、ほとんどなかった。
そんな二人を見ていて、事情を知る阿笠は、二人で出かけさせてやりたいと思っていたのだろう。そんな気遣いが、コナンには、嬉しかった。
「アイツら、知ったらついて来れないにしても、怒るだろうな」
「かわいそうじゃが、親戚の法事とでも言っておくかの。学校も休まなならんじゃろ」
*****
平日といえども、東海道新幹線は、利用者が多い。ビジネスや用務客、外国人観光客、修学旅行や年配の団体客。
阿笠とコナン、哀が3人掛けのシートに座っていると、どうみても、おじいちゃんに連れられた孫2人という感じだが、会話の内容を聞いていれば、その様相は、一変してしまう。
「それで、博士、その工場って、奈良のどのヘンなの?」
窓際に座る哀が奈良周辺の地図を見て訊く。
「天理の東の方での。奈良駅まで、迎えに来てくれることになっておる」
「ホテルは、奈良市内なんだろ?遠くねえのか?」
隣に座るコナンが、哀の見ている地図を覗き込んで言う。
「車で30分ぐらいらしい。送り迎えしてくれるそうじゃ・・・まあ、3日ほどかかるじゃろうから、その間、奈良見物でもして、二人っきり過せるぞ」
一番通路側に座る阿笠が、ニヤニヤして二人に言う。少なくとも、祖父が、小学生の孫に言うセリフではない。
フーっと、二人揃ってため息をつき、ジト目で睨む姿も、孫が祖父を見る様子とは、程遠い。
京都に着くと、近鉄に乗り換える。特急で約30分。午後2時過ぎ、近鉄奈良駅に着いた。
その工場の経営者は、松尾久雄といった。60歳だというが、阿笠より若く見える。というより、阿笠が年以上に見えるのであって、彼の方が年相応の容姿なのだろう。
奈良県の中堅企業、松尾製作所の社長であるが、腰高なところは感じられず、コナンと哀に対しても、丁寧な挨拶をしてくる。
小学生二人だけにするのは、かわいそうだと、阿笠とは逆の気づかいをして、彼は、コナンと哀も一緒に来るように誘った。
「いや。この子たちは、しっかりしておるからの。ホテルさえ教えておけば、大丈夫ですよ」
「でも、やっぱり、子供二人を知らない土地に放っておくてのは、どうかと思いますが・・・」
松尾の言うことの方がもっともである。
「博士、せっかくだし、僕達も行くよ。博士のロボットも興味があるし・・・」
コナンがそう言うと、すまん、といった表情で、阿笠が頷いた。哀も、目を閉じて、仕方ないという感じで首をすくめた。
松尾の工場は、天理市街から東へ少し行った、山の中腹にあって、市街が見渡せる。阿笠と一通り、工場を見せてもらうと、松尾と阿笠は、例の機械のところへ行き、コナンと哀は、応接室に案内された。
女性事務員が缶ジュースを持ってきてくれた。
「ここに居ても退屈でしょ?この裏、グランドの方で遊んできたら?柵のあるところまでは、うちの敷地やから、遊んでても危なくないし・・・」
「うん、ありがとう・・・じゃ、行こ」
コナンは、彼女から缶ジュースを受け取ると、哀の手を取って外へ出た。
工場に隣接するグランドは、テニスコートが2面ぐらいとれそうな広さがある。山が迫る方に簡単なベンチがあって、二人で座る。
10月のさわやかな風が、山の木々の葉をざわつかせ、二人を包んだ。
「気持ちいいな」
「そうね」
コナンは、なんだか落ち着かない感じで、哀の顔色を覗っている。
「どうしたの?」
哀が怪訝な表情で訊く。
「うん?・・・いや、おめえの部屋以外で二人っきりてのは、随分久しぶりだかんな」
照れくさそうに頬をかくコナンに、哀はクスっと笑うと、
「そうね。ここじゃ、キスも、抱き合うこともできないし、持て余すわね」
「おめえな、そういうことをサラッと言うなよ」
コナンが指で哀の頭を軽く小突く。
「ったく・・・もう少し、子供っぽくしろよな」
「あら、最近、自分では、子供っぽくなったと思ってるんだけど?・・・あなたや博士に甘えてばかりいるし・・・」
「そういう意味じゃねえよ・・・でも、俺も、前は本当のガキになっちまうのが怖かったけど、今は、それもいいかなと思ってる」
「もう充分、子供じゃない・・・」
呆れたように言う哀の言葉に、コナンがその顔を軽く睨む。そして、フッと視線を外すと、
「おめえと一緒に、大きくなっていけるからな。これからは・・・」
そう言って、哀の手を握った。
「子供っぽくしろって言っときながら、この手は何?」
「おめえ、可愛くねえな」
コナンが哀に、こう言うのは、何度目だろう。二人にとって、もうこの言葉は、単なる決まり文句であって、本心の言葉とは違う。
だから、コナンも笑って言い、哀も笑って聞いている。
コナンは、工場の方を見て、人が見ていないことを確認すると、哀の頬に軽くキスした。
*****
夕方には、奈良駅前のホテルにチェックインし、夕食は、松尾が知り合いの店でご馳走してくれた。子供もいるということで、夜8時前には、ホテルへ3人を送ってくれた。
「すまんかったのう。明日は、わしだけで行くから、二人でゆっくり奈良観光でもしておいで」
阿笠がすまなさそうに言った。
「別に謝ることはねえよ。二人で、ゆっくり、できたし・・・な」
コナンが哀に同意を求める。
「そうね。風が気持ちよかったし、久しぶりに彼とゆっくりできた気がするわ」
哀も、阿笠に微笑んで言った。
翌日、阿笠は、8時ごろには、松尾の会社の迎えの車で出て行った。
「さて、どこに行く?」
コナンが哀に訊く。
「そうね。とりあえず、このヘン散歩しない?春日大社と東大寺、興福寺、奈良公園・・・繋がっているし・・・」
「そだな。結構、広いな・・・ゆっくり、歩いてみるか」
二人は、とりあえず、春日大社を目指して歩きだした。
春日大社を参詣し、その周辺、飛火野から奈良公園を散策する。このあたりには、鹿がたくさんいて、観光客から「鹿せんべい」をもらったりしている。
哀も、ひとつ買って、鹿に差し出すと、あっという間にたくさんの鹿たちに囲まれてしまった。鹿たちは、次々に哀が手にしている「鹿せんべい」を狙ってくる。
それだけでなく、次々に哀の手や胸、お尻に鼻を寄せてくる。ざっと、10頭はいるだろうか。
「ちょ、ちょっと」
鹿たちに、少し慌てる哀。
そんな様子を、コナンは、少し意地悪く、笑って見ていた。
「笑ってないで、助けなさいよ」
「いいじゃん。おめえ、動物好きだろ」
「もう・・・ちょっと、もうないわよ」
哀の手から、鹿せんべいは、すでに消えていた。それがわかると、鹿たちは、急に哀から興味を失ったように離れていった。
「ふう。あの子たち、随分、お腹空かせているのね・・・」
「動物好きのおめえとしては、悪い気はしねえだろ?アイツらに囲まれても・・・」
外国人観光客が、哀と同じように囲まれているのを見ながら、コナンがニコニコしている。
「でも、忙しないわね、少し・・・」
哀が苦笑している。
朝から、空は曇っていて、予報では、雨になっていた。しばらくして、そのとおり、雨が落ちてくる。
二人でひとつの傘に入って歩く。こういうとき、小さな体は、具合がいい。それでも、コナンは、哀が濡れないように、自分の肩を濡らして、哀の方に傘を差しかけている。
しばらくして、杉や松、かえでなど、木々が茂る公園内に、あずまやを見つけ、休憩した。
コナンが飲み物を買ってきた。缶ジュースを哀に渡すと、哀の隣に座る。哀は、ハンカチを取り出すと、黙って、雨に濡れたコナンの腕や肩を拭いている。
「サンキュ」
コナンが呟くように言う。拭き終えた哀がハンカチをポーチにしまうと、二人で、黙って雨の音を聞いていた。
平日の午前中、まして雨でもあり、人影は少ない。雨の音と傍を流れる小さな川の水音しか聞こえるものはない。
哀は、目を閉じ、コナンにもたれかかった。
「いいわね。こういうのも・・・なんか、この世に二人っきりって感じがするわ」
「そだな」
雨は、激しさを増している。鹿が一頭、あずまやに入ってきて、コナンと哀の足元に座った。
「おめえ、邪魔すんなよ」
コナンが足元の鹿に微笑んで言う。鹿は、首だけを上げ、向こうを見ていた。
その様子に、哀がクスッと笑う。
「守ってくれてるみたい・・・」
二人で体を寄せ合って座っていると、ずっと座っていたい気分になる。会話がなくても、お互いの心臓の音や、息遣いを感じていると、安心できる。
最愛の人とこうして過す時間は、何ものにも代えられない。コナンも哀も、あまりに心地よくて、時間が経つのを忘れていた。
ふと、コナンがあたりを見回す。
雨は、相変わらず激しく、木々の葉やあずまやの屋根を強く叩いている。
誰もいないのを確認すると、自分の体に寄り添う哀を抱きしめた。
「ちょっと、人に見られたら・・・」
哀が目を開け、少し慌てている。
「大丈夫だよ。誰もいないって・・・ちょっとだけ、こうしていたいんだ」
その言葉に、哀は、また目を閉じた。そして、コナンのぬくもりが体を全体を包んでくるような感覚に、涙がでそうになった。
コナンは、哀をゆっくり離すと、その顔を見つめて、少し照れたように笑った。
その時、足元の鹿が突然、立ち上がった。その顔が見つめる先を見ると、一頭の子鹿がいる。いくぶん弱くなった雨の中、ゆっくりと子鹿に近づくと、二頭は、一緒にどこかへ歩いていく。
「俺達もそろそろ行くか」
傘を手にしたコナンが、雨の様子を伺いながら言った。
「そうね。雨、小降りになってきたし・・・」
*****
20分ほどすると、雨もやんだ。
興福寺の五重塔を右に見て、猿沢池を通り、「ならまち」を歩いた。
その中の一軒の店で、哀が鹿のデザインの小さな巾着袋を手に取った。それを見ている哀の目が細くなる。
「かわいいわね」
「買ってやろうか?」
コナンが隣で優しく言う。
「ありがと。でも、あの子たちへのお土産にどうかと思って・・・」
「そだな。じゃ、色違いで5つ買おうか?」
「いいの?」
「ああ。旅行に行くっていたら、かあさんが小遣いをくれたんだ・・・おめえのために遣えって言って」
相変わらず、この親子は、自分のために気遣ってくれる。哀は、なんとも言えない優しい表情でコナンを見た。その顔は、コナンをドキリとさせるには、十分だった。そして、素直に綺麗だと思う。
鹿をデザインした小さな巾着袋を5つ。阿笠に少し大きめなものをひとつ。そして、コナンと哀は、自分達に、お揃いのハンカチを買った。
「ぼくたち、二人で来たん?」
支払いをするとき、店の女性の店員が訊いてきた。
「おじいちゃんと一緒に来たんだけど、今、お仕事してるんだ」
「そうなん・・・どっから来たん?」
「東京」
「へえ、えらいね・・・これ、あげるわ」
そう言って、飴玉が入った袋をくれる。コナンと哀は、少し苦笑したが、素直に受け取った。
「ありがとう」
「じゃ、気をつけてね」
笑顔で手を振る店員に見送られ、「ならまち」を後にした。
午後は、東大寺大仏殿に行った。
「大きい・・・」
大仏殿を見上げ、哀が呟く。
「昔の木造建築ってさ、地震で倒れることが少ないらしいぜ」
「柱なんかの組み方に工夫があるのね」
大仏殿の中に、高さが16mもある奈良の大仏、盧舎那仏坐像がある。
その北東の柱に、幅40cm、高さ30cmほどの穴がある。
コナンがその穴を通りぬける。
「おめえもやれよ」
そう言われ、哀も通り抜けた。
「なんで、こんな穴があるのかしら?」
「北東の鬼門にあるから、魔除とも言うし、梁を通す穴を開けるのを失敗したから、上下を逆にしたとも言われてるらしいぜ」
「ふ〜ん・・・小嶋君は、絶対抜けられないわね」
「そだな」
二人で小さく笑った。
大仏殿を出て、南大門へ戻る。
コナンが哀の手を取り、二人で手を繋いで歩いていく。
「あれ、かわいいカップルやなあ」
「ほんまや、手ぇ繋いで、仲良さそうやなあ」
関西弁で、おばさんらが話す大きな声が聞こえてきた。コナンと哀は、少しビクッとして、思わず、声の方へ振り向いてしまった。
「やっぱり、可愛いでぇ」
二人の顔を見て、おばさんグループが近づいてきて言う。5人だ。
「どっから来たん?」
「と、東京」
コナンが、おばさん達の迫力に後ずさって答える。
「えー、二人だけで、東京から来たんかいな?」
「いえ。おじいちゃんと・・・」
今度は、哀が後ずさって答えた。
「ほんなら、そのおじいちゃんって、どこにおんの?」
「今、仕事中なんだ・・・」
コナンと哀は、すっかり囲まれてしまった。
「ほんま、可愛いわ。うちの子、こんくらいん時、もっと憎たらしかったけどな」
「あんたの子や、しゃあないやろ?」
「よう言うわ・・・そら、あんたんとこの子は、可愛かったから、言われても、言い返されへんけど・・・」
二人のおばさんが言い合っていると、別のおばさんが言った。
「うちが子供の頃は、こんくらい、可愛かったで・・・」
すかさず、自分の子が憎たらしいと言ったおばさんの突っ込みが入る。
「ほんなら、この子、あんたみたいになるんかいな?」
「そらないわ」
これは、また別のおばさん。
「かわいそうやで、あんたとこの子、一緒にしたら・・・」
「そや、ぼくたち、これ、持って行き」
そう言って、可愛い子を持つというおばさんが、お菓子の入った袋を差し出した。
「いえ・・・結構・・・」
「何言うてんの!子供が遠慮なんかせんでええ!」
「そやそや。これも、あげるわ」
別のおばさんも、同じように袋を哀の手に持たせる。
「ほな・・・気ぃつけて行きや」
「バイバイや」
おばさん達は、囲みを解き、手を振って大仏殿の方へ去っていった。
コナンと哀は、渡された袋を手に、ポカンとして、しばらくそのまま立っていた。
「・・・なんなんだ・・・」
「関西に住んでたら、よく、こんな目に遭うのかしら?」
そう言い、顔を見合わせると、二人同時に吹き出し、しばらく笑っていた。
*****
次の日は、土曜日だった。
この日の午後に東京へ戻る。阿笠と駅で待ち合わせている時間まで、二人は、今度は、駅に近い興福寺を訪ねた。
時間が迫り、駅へ向かって歩いていると、いきなりコナンが哀の手をひいて、物陰に隠れた。
「な・・・どうしたの?」
「しーっ」
コナンが自分の後に隠した哀に振り向き、人差し指を立てて口に当てた。
「しっかし、アイツがいっちゃん先に結婚するやなんてなあ」
そう言いながら、数人で歩いている若い男女。そのうちの一人を見て、哀が驚いた。
(服部君!)
二人は、息を潜め、平次たちが行ってしまうのを待った。
しばらくして、平次が遠ざかると、そっちを見ながら、二人が駅への道へ戻る。
「驚いたな。なんでアイツがここに・・・」
「あなた達、よっぽど引き合うものがあるのね」
哀が半目で呆れた表情で、小さくなった平次の後姿を見ている。
「あれ?コナン君と哀ちゃんやん!」
二人が平次の後姿を眼で追っていると、不意に後から声がかかった。
(しまった・・・アイツには、くっついてるヤツがいたんだ)
コナンと哀が恐る恐る振り返る。
「和葉・・・さん・・・」
(やっぱり・・・)
和葉が驚いた顔で二人を見ながら言う。
「なんで、こんなとこにおんのん・・・しかも、二人だけ?」
和葉の目が細くなり、意味ありげな笑顔になってくる。
「えー、もしかして、二人だけで旅行?・・・マセてんなあ」
「ち、違うよ・・・阿笠博士が一緒だよ・・・駅で待ち合わせてんだ・・・」
コナンが両手を出して、言い訳している。
「和葉さんこそ、なんでここにいるの?」
哀が訊く。
「高校ん時の同級生が春日大社で結婚式挙げんねん。それで、平次や高校ん時の友達と来たんやけど、うちがトイレ行ってる間に、平次ら先に行ってまいよってん・・・」
コナンは、平次が行った方が気になり、チラッと伺い、和葉に言った。
「和葉姉ちゃん・・・平次兄ちゃんには、内緒にしといて・・・」
「なんで・・・ええやん」
「いや・・・お願い・・・もう、僕達、帰らないといけないし・・・」
和葉は、怪訝な表情をしていたが、笑顔になって言った。
「そやね、平次のあほ、みんなにいらんこと言いそうやもんな・・・ほんならコナン君。今度遊びに行くから、そんときまで、貸しにしとくわな・・・うちも行かなあかんし、また今度な」
そう言うと、和葉は、二人に手を振って、平次たちの後を追いかけていった。
「あったく、小学生相手に貸しってなんだよ」
「さすが大阪人ね」
「そっか、奈良って、大阪の隣だもんな・・・」
「だからって、偶然に会う?普通」
二人揃ってため息をつくと、駅の方へ歩き出す。
しばらくして、コナンが哀の手を取った。
「でも、邪魔が入らなかったし、楽しかったな」
「そうね。久しぶりに、あなたと二人でゆっくり話もできたし」
「な、また二人でどっか行こうな」
「ええ」
繋いだ手のぬくもりと、反対の手に持っているいくつかの袋。そして、少し感じる足の疲れ。そして、心に残る暖かいもの。それは、今回の旅行で手にした、自分たちへのささやかなお土産。
今回のことを懐かしく話せるようになる時、どんな生活をしているだろうか。哀と二人、幸せであればいいと、コナンは、哀の横顔を見て思った。 |